2014年01月05日

『ブラックライダー』 東山彰良/著



『ブラックライダー』
東山彰良/著 新潮社

SF評論家の大森望さんが絶賛していたので読んでみた。
確かにおもしろかった。

6.16と呼ばれる大破壊の後、寒冷化して食糧不足に陥った未来の地球。
人の遺伝子を埋め込んだ牛が家畜として飼育されているが、人が人を食う習慣も残っている。
アメリカ西部劇の形を借りた、黙示録的な愛と暴力の物語。

第一部は正直いまいちだったけど、第二部のメキシコに救世主が出現するあたりからぐっと密度が濃くなる。
ラテンアメリカ文学の家族史ものを読んでいるかのような濃厚な物語。
余韻を引くラストまで一気に読んだ。

東山氏によるとコーマック・マッカーシー『ザ・ロード』に触発されたそうだ。

放射能との向き合い方とか、ああ、そういう価値の転換が必要な世界が来ているのかも、と現代に突きつけてくるところもあった。
三島由紀夫の「美しい星」っぽいのかな? 読んでないけど。

6.16と呼ばれる破滅が何を指すのかははっきり示されないが、きっとヨハネ黙示録の章番号を指しているに違いない、と思って前後を見てみると、

6:12小羊が第六の封印を解いた時、わたしが見ていると、大地震が起って、太陽は毛織の荒布のように黒くなり、月は全面、血のようになり、 6:13天の星は、いちじくのまだ青い実が大風に揺られて振り落されるように、地に落ちた。 6:14天は巻物が巻かれるように消えていき、すべての山と島とはその場所から移されてしまった。 6:15地の王たち、高官、千卒長、富める者、勇者、奴隷、自由人らはみな、ほら穴や山の岩かげに、身をかくした。 6:16そして、山と岩とにむかって言った、「さあ、われわれをおおって、御座にいますかたの御顔と小羊の怒りとから、かくまってくれ。 6:17御怒りの大いなる日が、すでにきたのだ。だれが、その前に立つことができようか」。

うーん、6章ってのはあってそうだけど、16節は中途半端かな。


『ザ・ロード』 コーマック・マッカーシー 著


『悪の法則』 コーマック・マッカーシー 著
映画版もよかったけど、せりふを味わうならこの脚本を読もう。

posted by 読書家 at 22:20| Comment(0) | TrackBack(0) | SF,ファンタジーなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月03日

『ゼロ・グラビティ』アルフォンソ・キュアロン 監督

監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー


久々に3D映画をみた。
すごく良かった。
さすがはキュアロン監督。
臨場感たっぷりの宇宙サスペンス映画の傑作。
前作『トゥモロー・ワールド』も素晴らしかったし、もうSF映画はキュアロンにまかせたい。

もっともこれはSFとは言えないかな。
ちょうど国際宇宙ステーションで船外活動やってたし、タイムリーですごくリアルな感じだった。
でも、ロシア人が衛星を破壊するって設定はリアリティあるのかな?
中国が破壊した時はずいぶん批判されてたけど、あんなことするのだろうか。

音楽が時々うるさすぎるのがちょっとよくなかった。
この映画にこけおどしは不要でしょう。
もっと宇宙の静けさを感じたかった。

あとジョージ・クルーニーが喋りすぎるんで、字幕に頼るしかない身としては辛かった。
見事な3D映像を堪能するには無口な男の方がよかった。
いや、本当にいい男なんですけどね。


J・J・エイブラムス&アルフォンソ・キュアロン監督、新ドラマでタッグ
このSFミステリードラマ『Believe』も本当に楽しみ。


ゼロ・グラビティ [DVD]


トゥモロー・ワールド プレミアム・エディション [DVD]

posted by 読書家 at 22:31| Comment(0) | TrackBack(1) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月22日

『かぐや姫の物語』 高畑勲監督


とても良かった。
心から楽しめた。
理屈っぽい映画かな、と覚悟して見に行ったのだけど、笑いあり涙あり、魅力的な細部に満ちた娯楽映画にちゃんとなっていた。
それでいて、生きることの本質みたいなものまで考えさせてくれる、
竹取物語の基本的な筋は変えずに、ここまで深い物語を描けるとは。
日本のアニメーションの最高傑作の一つと思う。

絵も良かった。
日本のアニメで、ストレスなく全編みられたのは久しぶり。
地味だしぱっと見そんなに魅力的とは思えなかったけど。
『老婦人とハト』とか『老人と海』とか外国の物に比べるとどうかな・・・。
でも日本の長編アニメでここまで可能なのか、と希望がわいて出た。
後に続く人が出てくれればいいなあ。
正直、私は最近の日本アニメの絵柄がほとんど受け付けられなくなっていて、まどかマギカなんかも半分くらい目をつぶり耳をふさぎながらみていた。すごいとは思ったけど。
だからこの映画には砂漠で泉に出会った人のようにさわやかな喜びを感じた。

特に疾走シーンの荒々しいタッチが良かった。
全体に、もっと自由奔放にいろんな手法が入り混じっても良かったんじゃないかな。
感情さえつながっていれば十分つながるはずだと思う。

不満というわけではないけど、物語もちょっと整理されすぎのような気もした。
テーマを表現するために考え抜かれたストーリーという感じで、それはもちろん欠点じゃないにしても、昔話らしいわけのわからない魅力も残してほしかった。

宮崎駿と通じるものが大きいのかな、とも思った。
浄土よりも地上の汚濁に満ちた生を肯定する姿勢はナウシカと通底する。
(成仏するより畜生道に落ちろ、ってことだよな)
夢の中でしか飛べなくなっているのも、たまたまかもしれないけど『風立ちぬ』と同じだし・・・。もっと素直にファンタジーを作ってくれればいいのに、とも思うけど、いま何を作るべきかとか誠実に考えちゃう人だからこそ質の高い映画を作れるんだろう。

技術的にもすごいのだろう、わたしにはよくわからないが。
油絵アニメーションだともう30年近く前の、『英雄時代』ってハンガリーの長編アニメーションがあって、この絵で動かせるのか、とびっくりした。映画としてもとても面白かったし。また見たいなあ、と思ってたらネットで見れるのか。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2432975
今見るとやっぱり止め絵が多いかな。



かぐや姫の物語: スタジオジブリ絵コンテ全集20


かぐや姫の物語 ビジュアルガイド


ユリイカ 2013年12月号 特集=高畑勲「かぐや姫の物語」の世界



瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (Nemuki+コミックス)
諸星大二郎 (著)
一番最近読んだ昔話の再話ということでこの漫画も・・・。
日本、中国、西洋が入り混じった和華蘭という言葉があるそうだが、日中欧の昔話を諸星流にアレンジ。
確かにわけのわからん話が多い。
それも魅力的。


posted by 読書家 at 01:09| Comment(0) | TrackBack(2) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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