2012年07月16日

『カラマーゾフの妹』が発売される



第58回江戸川乱歩賞受賞作、高野史緒さんの『カラマーゾフの妹』は8月に発売予定だそうだ。
Takano's diary(高野さんのブログ)
(受賞時のタイトル『カラマーゾフの兄妹』から改題。妹萌え小説ではないことを願う)

『カラマーゾフの兄弟』の書かれざる第二部を引き継ぐ形で、父殺しの真相を描くのだという。

うーむ、どうなんだろう。
興味がないといえば嘘になるが、読みたいと言えばそれも嘘になる。
読めば怒りのあまり本を床に叩きつけることにならないとも限らない。

高野さんの小説は『ムジカ・マキーナ』と、SFマガジンでピラミッドを題材にした短編を読んだだけだが、相当な教養の持ち主だと思う。
ロシアにも詳しいようだし、きっときちんとした小説にしてくれているだろうとは思うのだが。
(個人的には、先日検証記事を書いたジューチカとペレズヴォン問題があつかわれるのかどうかも気になるところ)

たとえどんなことになっても、焚書を叫ぶことは避けなければ。
『華氏451』の感動を思い出そう。

「読みたい本」のカテゴリに入れたが、本当なら「読みたいような読みたくないような本」という新たなカテゴリが必要なところだ。


選考委員の東野圭吾さんによると「他の候補より頭一つ二つ抜けていた」とのことだ。
乱歩賞の水準から推し量るに、他の候補作は140センチメートル程度だろうか。
「頭一つ二つ」をいい方にとって頭二つ分とすれば、約48センチ。
すなわち『カラマーゾフの妹』は約188センチメートルという計算になる。
日本人としてはかなりの大柄だが、ドストエフスキーに挑むのであれば2メートルはほしいと思うのだが・・・。

MSN産経ニュース(高野さんのインタヴューあり)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120528/art12052808220002-n1.htm
参考:身長別−男女の頭の大きさ(顔の大きさ)の平均http://homepage3.nifty.com/orangejuice/head1.html

※本記事後段の記述に、身長差別の意図はありません。「頭一つ抜ける」という日本語の慣用句をあえて文字通り受け取った冗談にすぎません。不快に思われた方がいればお詫びします。


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2011年11月05日

宮崎駿『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』より

本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)〈アマゾンへ)


宮崎駿 著『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』を読んだ。

宮崎駿が、長年親しんできた岩波少年文庫から50冊を選んで推薦文をつけた非売品の小冊子「岩波少年文庫の50冊」(2010年)を元に、それについてのインタビュー、そして3月11日震災後のインタビューをまとめ、加筆したもの。

私は3月11日震災後、しばらく本を読む気が起こらなかったのだけど、唯一、子供の頃好きだった本を読み返したい、とけっこう痛切に思った。実際は暇がなくて読めなかったけど。
子供の頃の読書体験が自分にとってすごく大切なものなんだなって改めて思った。
そんなわけで、尊敬する宮崎駿が子供の本について語る、というのは、私にとってとてもうれしい本だ。
挿絵もたくさん転載されているので、見ても楽しい本にもなってる。

後半のインタビューもなかなか読み応えがあった。宮崎さんの子供時代の読書体験、学生時代の「児童文学研究会」について、挿絵の魅力、石井桃子さんや中川李枝子さんのすばらしさについて、など。
3.11震災後のインタビューでは、アナーキーでニヒリストだった父親について、関東大震災や東京大空襲について、次回作について、恐ろしい風が吹き始めた時代をどう生きるか、といったことが語られる。

岩波少年文庫の50冊のうち、半分くらいは読んだこと無いものだった。
その中で読みたくなった本をいくつかメモしておきたい。
引用は適当です。

『ぼくらはわんぱく5人組』 カレル・ポラーチェク 作
宮崎さんは中川李枝子さんに薦められて読んだそうだ。著者のポラーチェクはアウシュビッツで殺された人だとか。
恐ろしい風が吹きはじめた今の時代と、「同じ風のなかで書かれた」と宮崎さんは語る。
「放射能をはらむ風が窓の外の樹々を吹き荒れているのを見ているうちに、今、もう一度『ぼくらはわんぱく5人組』を読まなければならないと思いました。」

『チポリーノの冒険』 ジャンニ・ロダーリ 作
お話も面白いけど、挿絵に大きな影響を受けたそうだ。
「描いているといつの間にかスチェエーヴァの絵のようになっちゃうんですよ。こういうデフォルメーションの仕方というのは、とても面白かったですね。チポリーノの眼も、とても小さく描いてあります。すっかり好きになってしまって、マンガ家になる野心をすてるきっかけになりました。この描き方では、日本のマンガ界では仕事がないと分かってましたから。」
というくらい影響を受けたそうだ。それならなんで宮崎アニメの人物はあんなに眼が大きいんだろう。

『飛ぶ教室』 エーリヒ・ケストナー 作
「子供の時、ぼくはこの本にとても感動しました。キラキラした夢のような世界でした」
 わたしも子供のころケストナーが大好きだったのに、これだけは読んでなかった。ファンタジーでも冒険ものでもなさそうなので心惹かれなかったのかな。

『フランバーズ屋敷の人びと 1 愛の旅だち』 K・M・ペイトン 作
「やっと飛びはじめた頃の飛行機の原始的なエンジンや機体について、こんなにありありと書かれた本はありません」

『真夜中のパーティー』 フィリッパ・ピアス 作
「短い作品の中に世界が描かれていました。文学ってすごいなあ」

あと『まぼろしの白馬』、『ハンス・ブリンカー』、『ネギをうえた人』(「あなたはネギを好きですか?ぼくは大好きです」という推薦文が不思議)など。
他にもディテールに魅力があるという「魔使い」シリーズ(東京創元社)とか、恥ずかしくて隠れて読んだという『バラとゆびわ』『愛の妖精』とか。


宮崎駿監督の次の映画についても言及されていて興味引かれた。関東大震災が出てくるそうだ。
次回作についてネットで検索してみると、Cut 誌 2011年 09月号 のインタビューなどから、まんが「風立ちぬ」が原作になるのではないかと予想されているらしい。ゼロ戦開者設計者の堀越二郎の若き日を描いた宮崎駿によるマンガ。
http://blogs.dion.ne.jp/tapas06/archives/10385191.html
http://plaza.chu.jp/diary/2011/09/ghibli-kaze-tathinu.html

私自身は、Cut 誌のインタビューを読んで、震電の開発者の話ではないかと推測していた。

昭和57年の講演で宮崎さんはこう語っている。
「日本でも終戦まぎわに、一人の青年に戦闘機の製作が負かされたことがあります。26歳の青年です。
彼が作った飛行機は「震電」というんですが、とんだのは2〜3回だけ。」
「工場は小さかったけれど、ものすごく斬新な飛行機だったんですよ。」
「その青年の夢と希望があふれている飛行機で、設計思想そのものがすばらしいんです。」
「戦争のおかげで、26歳の青年が飛行機の設計主任者になれて、同時に戦争のために、その人の希望はすべて失われていったんです。」
映画 風の谷のナウシカ GUIDEBOOKより)

でも終戦まぎわに26才だと関東大震災のときは幼児か。父親の体験と重ねたいのだとすると小さすぎるかな。
『本へのとびら』のインタビューにも堀辰雄への言及があったし、やっぱり「風立ちぬ」かもしれない。

題材もだけど、絵柄がどうなるかの方が気になる。正直言ってジブリアニメの絵にはほとんど魅力を感じられなくなっている。
たとえば「最貧前線」(『宮崎駿の雑想ノート』所収)のような絵柄で日本を描いてくれるなら是非見たいと思う。でもどうせまたいつもの絵なんだろうな。
せめて人物の目を小さく描いてほしい。『チポリーノの冒険』を思い出して。

いずれにしても、ファンタジーは当面作れない、と明言してるし、派手な戦闘シーンなど描きそうもないし、宮崎駿の本領は発揮されないんじゃないかって気がする。
宮崎監督の次回作にわくわくできなくなってしまった自分が悲しい。

あと宮崎美少女も出ないといいな。
『秘密の花園』の挿絵について「意地悪そうな顔色の悪い少女の絵を描いたら、読者は読むのをやめちゃうでしょう。」って、そんなことないですよ、宮崎さん。
やっぱり宮崎さんにとっては美少女かどうかがとても重要なのかな、と、美少女だったことのない私は寂しく思うのだった。


リンク
BS日テレ「ジブリの本棚から 宮崎駿が選んだ一冊」という番組で、毎週一冊紹介している。



これは宮崎駿とは関係ないけど、挿絵から岩波文庫を読む楽しい本。

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2011年06月05日

古賀 正一さんの本とか


読みたい本をメモしておこう。


『たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く』
石村 博子 (著)

NHK教育テレビ「こころの時代〜宗教・人生」で放映した「少年は荒野をめざした」に感動したので、ぜひ読もうと思う。
古賀正一さんはビクトル古賀の名前でも知られ、ロシアの格闘技サンボの世界チャンピオンとして名をはせた方。
旧北満洲のハイラルで、日本人の父と、亡命ロシア人コサックの母との間に産まれた正一少年。
日本の敗戦とともにロシアの侵攻にあい、家族と別れて日本を目指す。
日本人引揚者の集団からは受け入れてもらえないばかりか、「露助」と罵られ暴行を受ける。彼はたった一人で1500キロを旅することになる。
生き残るためのコサックの知恵。母の教えたまえし歌を口ずさみながら、11歳の少年は過酷な旅に耐える。
何度も悲惨な目にあいながらも、神への感謝を胸に、希望を失わない強さに心うたれた。



その古賀さんは、日本に引き上げ後、東京のニコライ堂で鐘撞きをすることになる。ニコライ堂の図書室でであったとのが『静かなドン』。
「ロシアの心に触れさせてもらった」という。
作者ミハエル・ショーロホフの母もコサックだったそうだ。
いつか読みたいと思いつつ、長さにひるんで読まずにきたけど、今度こそ読もう。近いうち。



『泉』チャールズ・モーガン著 (新しい世界の文学〈第12〉白水社)

大震災以降、普段あまり読まない雑誌も読むようになった。
『週刊現代』6月4日号(5月23日発売)を見てたら、作家・志水辰夫氏の「わが人生最高の10冊」という記事があった。
2位に選ばれていたのがチャールズ・モーガン著『泉』。
1位の『魔術師』(ジョン・ファウルズ著)とともに、読みふけったという。
『魔術師』がめっぽう面白かったので、それに並ぶというのであれば読まなければいけない。
ジョン・ファウルズ『魔術師』の感想

ちなみに順位はつぎのとおり。
1位 『魔術師』ジョン・ファウルズ著
2位 『泉』チャールズ・モーガン著
3位 『夜間飛行』サン=テグジュペリ著
4位 『深夜プラス1』ギャビン・ライアル著
5位 『血の収穫』ダシール・ハメット著
6位 『宮本常一著作集』全50巻
7位 『たけくらべ』樋口一葉著
8位 『半七捕物帳』岡本綺堂著
9位  講談本
    『猿飛佐助』『霧隠才蔵』『三好清海入道漫遊記』など
10位 「少年倶楽部」

http://www9.plala.or.jp/shimizu-tatsuo/ (志水辰夫公式ページ)
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2010年08月01日

宮部みゆきの薦める本

NHKーFMの「トーキング・ウィズ・松尾堂」で、宮部みゆきさんが推薦していた3冊をメモしておく。
放送は2,3週前だが、今日聴いたのだ。

各ジャンルから代表的1冊を選んだとか。
ホラー代表は、スティーヴン・キング『呪われた村』
これだけ私も既読。
宮部さんは、なにからなにまで書き尽くす、というキングの手法がうまくいっていた頃の作品、といっていた。でもどうだろろう。作品の側より読み手の側の問題じゃないかと思う。初期の作品だけど、私が読んだのはだいぶ後になってからで、既にキングに飽きていた。延々とつづく細部描写が退屈でしょうがなかった。

ミステリからはアガサ・クリスティの『五匹の子豚』
クリスティーの最高傑作だとか。知らなかった。代表作はだいたい読んだつもりでいたけど。

時代小説では、海音寺潮五郎の『列藩騒動録』
島津騒動、伊達騒動など、江戸時代のお家騒動を描く史録小説。何度読んでも面白いそうだ。








ついでに、京極夏彦さんが推薦していた3冊もあげておく。

『鳥山石燕(とりやませきえん) 画図百鬼夜行』 監修:高田衛
『屁(へ)』 福富織部
『日本昔話大成』 編:関敬吾
ラベル:宮部みゆき
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2008年05月25日

『源氏物語』の現代語訳

 源氏物語はいつかは読もうと思ってるのだけど、原語で読めるはずもないので、どの現代語訳を選ぶかってことになる。NHKラジオの講演で、瀬戸内寂聴さんが源氏物語について語っていて、各翻訳の特徴を述べていた。いつか読む日のためにメモしておく。

 与謝野晶子訳 瀬戸内さんはこれを最初に読んだそうだ。読みやすい。長い文章は短く分割し、冗長な部分はとばしているらしい。初心者によい。和歌は現代語訳していない。日本人ならこれくらいわかるでしょ、ということか。

 谷崎潤一郎訳 国文学者の助言をうけ、正確でとても原文に忠実な訳。忠実すぎて読みにくい。長い文章は長いまま。主語も補わない。初心者には読みにくいだろう。眠りながら読んだそうだ。

 円地文子訳 名文だが、必ずしも原文通りではないそうだ。私ならこう書く、と感じたらそう書いてしまうとか。特に、原文ではセックス場面はほのめかすだけだが、円地さんはそれじゃものたりなくて自分で書いてしまうのだそうだ。

 瀬戸内寂聴訳 現代の読者には新しい円地文子訳でさえ読みにくくなっている。小学校高学年の子供(ただし賢い子)から年寄りまで読めるように訳した。過去の訳文と重ならないよう気をつけた。原文にないものは付け加えなかった。

鹿島茂氏の評と大体一致してるな。


 わたしは谷崎潤一郎の『細雪』がすごく好きなんだけど、源氏物語の翻訳が『細雪』に影響したといわれているので、谷崎訳で読もうと思ってたんだけど、読みにくいのか。うーん。
 円地文子は、『なまみこ物語』が思ったほどおもしろくなかったので選択肢に入ってなかったけど、瀬戸内さんが伝える仕事のやり方を聞くと、ちょっと読みたくなった。円地文子は瀬戸内寂聴の仕事部屋に押しかけて、多大な迷惑をかけつつ翻訳したそうだ。網膜剥離をわずらい、命がけの訳業だった。でも原文を離れてはだめだろう。
 やはり谷崎訳かな。挫折しそうになったら瀬戸内訳に切り替える。

 でも源氏物語ってあらすじとか聞いても全然おもしろそうに思えないんだよなあ。色好みの男がもてまくる話なんて読みたくない。まあ『細雪』だってあらすじだけではあんなにおもしろいとは思えないだろうし。
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2005年11月02日

『阿片王 満州の夜と霧』から

 きのう『阿片王 満州の夜と霧』(佐野 眞一 著)について書いたが、これに紹介されていた本の中から面白そうなものをメモしておこう。


『上海ラプソディー―伝説の舞姫マヌエラ自伝』和田 妙子 (著)ワック刊(amazonへ)
 当時の上海で一世を風靡した日本人ダンサー、マヌエラこと和田妙子さんの自伝。彼女が踊っていた虹口地区のナイトクラブ「ブルー・バード」には里見甫が通っていた。李香蘭もお忍びできた。また日本の軍人たちも、フランス疎開などでは嫌がられるため、虹口地区に集まっては威張り散らし、乱痴気騒ぎしていたらしい。
 マヌエラさんは『上海 魔都100年の興亡』(ハリエット・サージェント著)のプロローグにも登場してた。


『上海テロ工作76号』晴気慶胤・著
 当時の上海では蒋介石の藍衣社やCC団、汪兆銘側のジェスフィールド76号らの秘密組織が血で血を洗うテロ合戦を繰り広げていた。晴気が日本の情報将校として実際に体験したことを三文スパイ小説並みの文体で描いた本。
 品切れのようなので『上海 モダンの伝説』森田 靖郎 (著)にリンクしておこう。


『魔窟・大観園の解剖』満州国警務総局保安局編
(再刊)『大観園の解剖―漢民族社会実態調査』佐藤慎一郎 (著), 伊達宗義(解説) 原書房(amazonへ)
 ハルビンにあった満州一の歓楽街、大観園をルポした奇書中の奇書だとのこと。引用文を読むだけでも震えがくるほどで、かなり恐ろしい魔窟として描かれている。確か『満州鉄道まぼろし旅行』(川村湊)にも引用されていた。解説を書いている伊達宗義は、伊達順之助の御子息(本物の方)だろう。


『映画渡世・地の巻―マキノ雅弘自伝』マキノ 雅弘 (著) 平凡社
 “最後のカツドウ屋”といわれた映画監督マキノ雅広の怪著というべき回想記、だそうだ。


『夕日と拳銃』 檀一雄著
 伊達順之助をモデルにした小説。日本の冒険小説の嚆矢とも言われる。ただ、順之助の息子・宗義さんによれば、伊達弘視という詐欺師(里美甫の晩年の秘書的存在でもある)が順之助の息子を騙って檀に話を売り込んだため、実際の順之助よりスケールが小さくなってるそうだ。


『馬賊戦記―小日向白朗 蘇るヒーロー』朽木 寒三 (著) ストーク刊
 日本人馬賊・小日向白朗の生涯。

 なお、小日向についてはライオンズ伝 というサイトに詳しい。読書案内としても非常に充実したページだ。
 また、日中戦争時代の父・野中信一郎は、小日向と生死を共にした野中進一郎について、御子息が詳しく書いたページ。


『東京裁判資料・田中隆吉尋問調書』(粟屋憲太郎ほか編)大月書店
 田中隆吉は、上海事変をはじめ数々の謀略にかかわり、東京裁判では検察側に回った。彼に対する国際検察局の尋問が詳しく紹介されている。
 この人が裏切ってくれなければ数々の日本軍の謀略が闇に葬られていたかもしれないのだ。


『其の逝く処を知らず 阿片王・里見甫の生涯』西木正明(著)集英社文庫
 里見の生涯を小説仕立てで描いたもの。本屋でぱらぱらめくってみた感じでは、かなりストレートに記述されていてこっちのほうが佐野眞一氏のものよりわかりやすいかもしれない。作者の想像も少なからず交えているそうで、その区別がつかないのが難点か。戴笠と直接取引する場面もあったようだが、どうなんだろう。なお梅村母娘は登場しない。
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2005年06月12日

SFマガジン 2005年5月号

SFマガジン 2005.5

早川書房 (20050501)
通常24時間以内に発送します。


 前回、「アトランの女王」について書いたけど、そこで触れたチャイナ・ミエヴィルによる宣言文「ニュー・ウィアードよ永遠なれ」がこの雑誌に載ってる。「ニュー・ウィアード・エイジ 英国SFの新潮流」っていう特集のひとつだ。
 最近の英国ファンタジーの隆盛を、ニュー・ウィアードって呼んでるそうだ。もっとも定義ははっきりしないし、賛同者も少ないそうだが。でも意欲作が多数出版されてるのはたしからしくて、この特集でもすごく面白そうなのがいくつか紹介されている。早く読みたいもんだ。

 本号の掲載短編の中では、「サンドマン」のニール・ゲイマンによる「エメラルド色の習作」が面白かった。シャーロック・ホームズとクトゥルー神話を結びつけた楽しい作品。しかしクトゥルーものってなんでこんなに人気なんだろう。ミエヴィルも影響受けてるそうだし。ラヴクラフトはいくつか読んだけどピンとこなかった。ちなみに私が一番好きなクトゥルーものは諸星大二郎の「栞と紙魚子」シリーズなのであった。

 本号で紹介されてたのをいくつか挙げておく。

 チャイナ・ミエヴィルは、ダークな都会派ファンタジー『キング・ラット』が結構評判になってたけど、これが習作にすぎなかったって言われるほど2作目以降はすごいそうだ。翻訳予定とは書いてないけど、久しぶりに原語で読むかなあ。でも何ヶ月かかるかわからんからなあ。ここでPerdido Street Stationの内容を紹介してくれてる。

 イアン・マクラウドの The Light Ages は、エーテルがすべての産業の基礎となった改変世界を舞台としたビルドゥンクスロマンだそうだ。ディケンズとピークを合わせたようなって評もあって、まさに私の好みど真ん中だ。


『キング・ラット』
チャイナ ミーヴィル



Perdido Street Station
China Mieville



The Light Ages
著者: Ian R. MacLeod

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2005年01月08日

『チベット旅行記』河口 慧海

Amazonで見る(チベット旅行記 講談社学術文庫)

 挫折した本で読み返したいものについても書こう。これは十代の半ばに読もうとして半分くらいで投げ出した。20世紀初頭、仏教の原典を求め、厳重な鎖国をしくチベットに潜入した記録。
 文章は平易だし波乱万丈の旅行記なので、読もうと思えば最後まで読めたはずと思うけど、慧海が無知で淫猥なチベット人を馬鹿にするのが嫌で読むのをやめてしまったような気がする。例えばチベット密教を確立した蓮華生(パドマサンバヴァ)について、慧海は「恐らく悪魔の大王が仏法を破滅するためにこの世に降りかかる教えを説かれたものであろう」とまで断定し、蒙古人の博士と激論になったりしてる。今ざっと読み返したらものすごく面白そうなんだけど、当時の私は明治人にまで今風の政治的公正さを求めていたみたいだ。
 私が抱いていたチベット人のイメージが破壊されそうなのが嫌だったこともあるようだ。当時は経済至上主義の日本が死ぬほど嫌いで、チベットとか辺境といわれる地に高い精神性を求めて思い入れしてた。勝手な幻想を押し付けていたわけで、今思うと考えが足りなかったと思うけど、じゃあ今は考えを深めて賢くなったのかというと、単にシニカルで無感覚になっただけとしか思えないのがつらいところだ。

padma sambhava 蓮華生

rinne 六道輪廻図

mahakara マハーカーラ


チベット仏教の本

『三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界』 中沢新一著 テレビ番組が元になってるだけにとてもわかりやすい。美しい画像も多数収録。

改稿『虹の階梯 チベット密教の瞑想修行』 中沢新一、ラマ・ケツン・サンポ著 ニンマ派の密教修行を詳しく解説した書。

『性と呪殺の密教―怪僧ドルジェタクの闇と光』 正木 晃著 密教の性的な側面について知るにはこれがいいそうだ。読んでないけど。
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2004年12月25日

宮崎駿が薦める本(や映画) その2

「季刊 幻想文学」第9号のインタビューからの抜粋
 「ぼくは神話ってわからないんですけど、ル・グインの『ゲド戦記』みたいなのは好きで何十回と読みました。『闇の左手』なんかはわけがわからなくて、やめちゃったけど。やっぱり短編のほうがわかりやすい。とにかく、『ゲド戦記』は好きですね。映像にしちゃうとダメだろうけど。生き物としての竜を存在感をもって書いたのは彼女だけだと思う。とてつもない翼もってて、眼を見ちゃいけないとか、太古の言葉でしゃべるとかね。あの竜は実に気持ちよかった。」
 「最近ではヴァン・デル・ポストの『風のような物語』『はるかに遠い場所』がすばらしかったです。南アフリカの草原をね、白人の少年が原住民と友だちになりながら旅する物語でね。少年の物語のもっともすぐれたエッセンス……ひきつぐべき正当な立場を見事に受継いでいると思うんです。訳はひどく読みづらかったですけどね。」
「ル・グインとかヴァン・デル・ポストとかはユングの学問とつながってるって聞いて、ユングも読もうと思ったけど、ああいうのはダメですね、ぼくは。頭いたくなっちゃう。学生時代もね、マルクスとかむずかしいのはわかんなくてね、宮本常一の民俗学なんかは事実そのままで好きだったなあ。あと当時、『人間以上』(スタージョン)って読んで感動しましたね。さびしかったのかな、やっぱり。」
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2004年12月20日

宮崎駿が薦める本 その1

 私は宮崎駿のファンで、インタビューやエッセイなどで彼が推奨している本を、いつか読もうと思って憶えておくようにしていた。それをここに書く。手元に引用元がある場合はなるべくそれを写したが、多くは記憶に頼っているので正確ではない。悪しからず。

まずは子供の本について。
 岩波書店「図書」1990年7月号の岩波少年文庫40周年特集で、河合隼雄、落合恵子と鼎談してる。その発言から拾うと、
(フィリッパ・)ピアスのものは、僕も好きです。そのほか、人にすすめようといろいろ名前を挙げると、ほとんどイギリスのものになっちゃうんです。ファージョンは一通り全部読めとか、歴史ものはサトクリフを全部読まなければいけないとか、少年活劇ふうのものになると、フィリップ・ターナーを全部読めとか。…(日本のものでは)『ノンちゃん雲に乗る』なんかはとても好きです。」
『ゲド戦記』(ル=グウィン作)はとても好きです。ほんとに何度読んだかわかりません。」 これをもし映像化するなら自分にやらせろと思ってるそうだ。ただ魔法を映像化したらすごくちゃちなものになるだろうとのこと。また竜の描き方に一番感心したそうだ。『ハウル』や『千と千尋』の参考にもなったかな。なおゲド戦記はサイファイチャンネルがテレビのミニシリーズ化した(公式サイト)。こ、これがゲドなのか。見たいような見たくないような……。
林明子さんの絵本が好きなんです。こういう素直な目でものを見て描かないとだめだという教材に、よく林明子さんの絵本を持ってきてみんなに見せるということをします。」
「クローディアの秘密」(カニグズバーグ)というのは映画化したい作品の一つなんです。…アニメーションで上野の山に潜伏するという話だったらできるんじゃないかと」
 なお、私が大好きな「ナルニア国ものがたり」ミヒャエル・エンデは好きではないらしい。「ライオンが出てきたとたんに、何でみんなこんなふうな気持ちになるんだ、誰も納得できない。…僕はナルニアは途中まで読んで放棄してしまった人間ですから。」「僕はエンデがなぜ面白いのかわかりません。僕はむしろ精神の衰弱を感じるんですけど…『はてしない物語』は、読んだとたんに、これはしんどいなと思ったのは、ああいう手順を踏まないとファンタジーの世界に入れなんですかと、そういう思いがしたんです。」 だから『千と千尋』はあんなに簡単なのかな。河合隼雄さんが、ドイツ人と日本人の現実認識の違いなどを説明してフォローしてる。

 どこで読んだか忘れたけどオトフリート・プロイスラー『クラバート』について、「ゲド戦記は好きだけどクラバートの方がずっと良い」と語ってた。理由は伝統に基づいているからだそうだ。

 確か「日本児童文学」誌の1990年10月号のインタビューで読んだんだと思うけど、パイ族の民話『白いりゅう黒いりゅう』をアニメーション化できないか、ジブリの若手と話し合ったそうだ。龍を自然の象徴として描こうとする若手に対し、宮崎氏は「全然だめだ、冷蔵庫を開けたらそこに龍がいたというような訳の分からないものにすべきだ。」というようなことを主張したらしい。なお宮崎氏の絵物語『シュナの旅』の元になった「犬になった王子」(チベット族の民話)もこの本に収録されている。『シュナの旅』のあとがきでは編著者名や出版社は明記されてるのになぜか書名が書いてない。

結構大変だな。今日はここまでにしよう。その2に続く。気力があれば。


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