2015年10月10日

『かわいい闇』 マリー・ポムピュイ他 作 ケラスコエット 画




『かわいい闇』
マリー・ポムピュイ 作
ファビアン・ヴェルマン 作
ケラスコエット 画
原 正人 訳

内容
子どもたちの無邪気な暴力と、悲惨な運命……かわいい絵とは裏腹の、恐ろしくも陰謀うずまくドラマに虜になり、あなたの眼は離れられなくなる。少女の身体に宿る、かわいい闇の物語。
(河出書房新社のサイトより)
 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309274904/


これは傑作。とってもおもしろかった。
童画のようなかわいらしい絵柄で描かれる、小人たちの残酷でシュールな物語。

絵はずっと眺めていたいくらいほんとにかわいいのだけど、内容はほんとにグロくて怖い。
そのギャップがたまらない魅力です。
季節の移ろいが美しい色彩で描かれ、その中心には九相図みたいに腐っていく少女の遺体。

少女と男の関係とか、謎も多い。
私が気になったのは、死んだ少女と主人公の小人の名前が同じらしいのはどんな意味があるのかな、とか。
作者はあえて曖昧なままにしているらしく、いろいろと想像を誘われる。

ちょっと残念に感じたのは、スクールカーストとか普通の嫌な人間関係の話みたいになっちゃったことかな。
途中までは、ほんとに妖精がいたらこんな感じかなあとか思いながら読んでただけに・・・。

でも傑作と思います。
日本語に訳されたバンド・デシネの中でもいちばん日本人に受け入れられやすいものの一つじゃないかって気がする。

ちなみに作画のケラスコエット(Kerascoët)というのは、マリー・ポムピュイとセバスチャン・コセの作画ユニットだそうです。
画像は原題の Jolies Ténèbres で検索するといろいろ出てきます。

北九州市漫画ミュージアムで、ケラスコエットの特別ワークショップがあるそうですよ。
http://www.institutfrancais.jp/kyushu/events-manager/kerascoet/
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2013年08月03日

『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』 (玄光社MOOK)



バンド・デシネとはフランス語圏のマンガのこと。BD(ベー・デー)ともいう。
多くの名作や新作が翻訳されて、日本にも広まってきているが、りっぱなガイドブックが出るまでになったか。

メビウス、エンキ・ビラルなどの巨匠から、若手の最近の動向まで、広く紹介してくれている。
私は「はじめての人」ではないので、そんなの知ってらあ、というような記事も多かったけど、図版も多くて、見て楽しいガイドブックだった。
今後の翻訳予定作のラインナップとか、未訳作の紹介とか、わくわくしながら読んだ。昔なら、おもしろそうだけどどうせ訳されないんだろうな、という静かな諦めとともに読むしかなかったところだど、今なら、待っていれば多くが訳されるのだ。

自伝エッセイ風のものとかルポルタージュとか、バンド・デシネの世界が多様化しているのはうれしいような気もするけど、一方で、普通の娯楽SFやファンタジーにあまり期待できるものがなさそうなのが残念だった。
〈剣と魔法もの〉とかもたくさん描かれているというし、ハイブロウなものばかりでなく、普通におたく的な人が楽しんでるものもあるんじゃないのかな。『時の鳥を求めて』もまあまあおもしろかったし。

BDに詳しい人たちが三冊ずつ選んでるので、私も三冊選んでみた。
1.天空のビバンドム ニコラ・ド・クレシー
2.ペルセポリスI イランの少女マルジ マルジャン・サトラピ
3.MONSTER モンスター[完全版]  エンキ・ビラル
三冊じゃ少なすぎるよ! って誰に依頼されたわけでもないのに。


『ユリイカ 2013年3月臨時増刊号』総特集☆世界マンガ大系 BD、グラフィックノベル、Manga…時空を結ぶ線の冒険

このムックも喜んで買ったのだけど、難しい論文が並んでて私には歯ごたえありすぎた。
図版もほとんど無いし。
青土社のサイト
http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791702510


関連リンク
ベデフィル
http://books.shopro.co.jp/bdfile/
ユーロマンガ
http://www.euromanga.jp/
国書刊行会 BDコレクション
http://www.bdcollection.jp/
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2013年06月02日

『ゴリアテ』 トム・ゴールド 著



『ゴリアテ』
 著者: トム・ゴールド 翻訳者: 金原瑞人
 発売元 パイ インターナショナル
 定価1,995円 (本体1,900円+税)


旧約聖書のダビデとゴリアテの物語を、ゴリアテを主人公にして読み替えたグラフィックノベル。
静かな展開とシンプルで味わい深い絵。
とてもよかった。

著者の トム・ゴールドは、「GUARDIAN」「NEW YORK TIMES MAGAZINE」 などで連載を持つ、漫画家・イラストレーター、だそうだ。
(パイ インターナショナルのホームページより。ここで中身も読めます。)
http://www.piebooks.com/search/detail.php?ID=4344


ペリシテ人とイスラエル人の軍勢が、谷を挟んで対峙している。
ペリシテ人の兵士ゴリアテは、大男だが心優しく剣の扱いも下手で、書き仕事が主な仕事だ。
ゴリアテの巨人ぶりに目をつけた隊長は、戦況を打開すべく、極秘の作戦を立案する・・・。


マンガだけど絵本に近い味わい。
シルヴァスタインとか好きな人にも良いかな。
ゴリアテの物語である以上、結末はあらかじめ予想されている訳で、軽妙でかわいらしい絵にもどこか哀しみが漂ってる感じがする。
違った結末にたどり着いてくれるといいな、と願いながら読んだのだけど、果たして・・・。


Caravaggio david.jpg
カラヴァッジョ「ゴリアテの首を持つダビデ」
もともと無残な絵だけど、このマンガを読んだ後ではなおさら心が痛む。



旧約聖書はずっと読んだことなくて、最近やっと読み始めた。
「創世記」を読み終わったところ。
岩波文庫版で読んでるけど、読みやすいしおもしろい。
文語訳でも読みたいのでこのサイトを参照してる。
http://web1.kcn.jp/tombo/v2/label.html

ダビデとゴリアテの話は「サムエル記上」第17章に載っている。
http://web1.kcn.jp/tombo/v11/samuel117.html

ゴリアテの登場場面を引用してみる。

ペリシテ人(びと)は此方(こなた)の山にたちイスラエルは彼方(かなた)の山にたつ谷は其(その)あひだにあり
時にペリシテ人の陣よりガテのゴリアテと名(なづ)くる挑戰者(たゝかひをいどむもの)いできたる其身(そのみ)の長(たけ)六キユビト半
首(かうべ)に銅(あかゞね)の[かぶと]を戴(いたゞ)き身に鱗綴(うろことぢ)の鎧甲(よろひ)を着たり其(その)よろひの銅(あかゞね)のおもさは五千シケルなり
また脛(あし)には銅(あかゞね)の脛當(すねあて)を着(つ)け肩(かた)の間に銅(あかゞね)の矛戟(ほこ)を負(お)ふ
其(その)槍(やり)の柄(え)は機(はた)の梁(はり)のごとく槍(やり)の鋒刃(は)の鐵(てつ)は六百シケルなり楯(たて)を執(と)る者其(その)前にゆく
ゴリアテ立(たち)てイスラエルの諸行伍(そなへぞなへ)によばはり云(いひ)けるは汝らはなんぞ陣列(そなへ)をなして出(いで)きたるや我はペリシテ人(びと)にして汝らはサウルの臣下(しもべ)にあらずや汝ら一人をえらみて我(わが)ところにくだせ
其人(そのひと)もし我とたゝかひて我をころすことをえば我ら汝らの臣僕(しもべ)とならんされど若(も)し我かちてこれを殺さば汝ら我らの僕(しもべ)となりて我らに事(つか)ふ可(べ)し
かくて此(この)ペリシテ人(びと)いひけるは我(われ)今日イスラエルの諸行伍(そなへぞなへ)を挑(いど)む一人をいだして我と戰(たゝか)はしめよと

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2012年12月29日

『レオン・ラ・カム 』 シルヴァン・ショメ作 ニコラ・ド・クレシー画



『レオン・ラ・カム 』
(作)シルヴァン・ショメ/(画)ニコラ・ド・クレシー/(訳)原正人
(2012年エンターブレイン刊、3,150円)

ニコラ・ド・クレシーの大ファンなのでまた彼のBDを読めてうれしい。

脚本のシルヴァン・ショメは、『ベルヴィル・ランデブー』や『イリュージョニスト』で知られるアニメーション監督。
ニコラ・ド・クレシーは『天空のビバンドム』などの天才漫画家。
二人は短編アニメーション『老婦人とハト』でもコンビを組んでいる。

《内容》
世界で絶賛されたアニメ映画監督シルヴァン・ショメと、不動の人気を博すBD作家ニコラ・ド・クレシーが贈る衝撃作!

毒と秘密と愛を携えて、麻薬のようなおじいちゃんが帰ってきた……。
斜陽の親族企業のもとに、創業者であり、一族の父祖・レオンが数十年ぶりに帰ってきた。
レオンの孫である気弱な青年ジェジェは一度も会ったことのない齢百にも達する奇妙な祖父に、はじめは警戒心を抱くが――。
(エンターブレイン社ウェブサイトより)
http://www.enterbrain.co.jp/product/mook/hobby/10295901


「レオン・ラ・カム」とは「麻薬のレオン」という意味だそうだ。
麻薬のように危ない魅惑に満ちた傑作マンガだ。

お話も皮肉が効いていておもしろいし、当然ド・クレシーの絵もすばらしい。
マジック・リアリズムというのかグロテスク・リアリズムというのか、ラブレー的なのかどうなのか、私にはよくわからないけれど、グロテスクな黒い笑いにみちた幻想奇譚に魅了された。

でもクレシーの絵は、『天空のビバンドム』に比べると随分とあっさりしている。
訳者あとがきによれば、このマンガ以降、濃厚な絵柄をあらためたそうだ。物語を語るにはこちらの方が良いのか。読みやすくはなっている。
『天空のビバンドム』に圧倒されたものとしては残念だ。でも薄まったとはいえやっぱりすごい。特に幻想シーンの異常さは独壇場だろう。

落ち目の化粧品企業を救う取引先として日本人サラリーマンが出てくるのも興味深い。
相当グロテスクに描かれているけど、この漫画でグロテスクでない人などほとんどいない。
怒るより、むしろこの奇妙な世界に参加できたことを日本人の一人として光栄に思う。

続編はさらに奇妙な話だそうだ。アングレーム国際漫画祭の最優秀作品賞を受賞。
どうか訳されますように。元旦のお祈りはこれにしようかな。

訳者後書きによれば、ショメ監督が『ベルヴィル・ランデブー』で、ド・クレシーに無断でクレシー的な背景画を使ってしまったために、二人の仲は気まずくなってしまったのだという。
それで『イリュージョニスト』ではまったく違う絵柄になっていたのか。
あれはあれでよかったけど、ド・クレシーの絵でまたアニメーションを見たいものだ。
私はショメ監督作はこの3本しか見てないが、『老婦人とハト』が一番の傑作と思う。http://umikarahajimaru.at.webry.info/200704/article_5.html


『ベルヴィル・ランデブー』DVD シルヴァン・ショメ 監督
「老婦人とハト」所収。

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2012年12月16日

『ムチャチョ ― ある少年の革命』 エマヌエル・ルパージュ 著



第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞!
だそうです。
おめでたいですね。どうもありがとうございます。
関係者でもなんでもないけど、一ファンとしてお礼を言います。
ちなみにマンガ部門の大賞は『闇の国々』(感想ページへ)


この『ムチャチョ』もすばらしいBDだった。

ストーリーは感動的だし、絵もとてもきれい。
透明水彩で描かれた美しい画面に見とれた。
外国の漫画は絵柄が苦手、という人もいるようだけど、これは日本人の好みにも合うと思う。
日本の漫画家でいうと安彦良和さんを緻密にしたような感じ・・・?(この種の見立ては不得意だけど)


1976年、中米のニカラグアのが舞台。
長年続いたソモサ独裁政権への民衆の怒りが高まり、サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)による解放闘争が拡がっていた。
政府高官の息子ガブリエルは若い修道士。絵の才能を見込まれ、教会の宗教画を描くべく、山岳部の小村に派遣される。
ルーベン神父の導きや村人との交流の中で、彼は多くのことを学び、成長していく。
だが独裁政権による過酷な弾圧は村にも及び、ガブリエルはいやおうなく闘争に巻き込まれていく・・・。

BDって人間を突き放して見るものが多いような気がするけど、これは情感豊かで人間味あふれる描写が魅力的。
悩めるガブリエルには感情移入せずにはいられないし、脇役も一人一人が心情をたくみに描きわけられてる。
波乱に満ちたストーリー展開は胸を熱くさせる。

もちろん革命勢力寄りの視線で描かれるわけだけど、単純な革命賛歌にはなっていなくて、熱狂の中の苦さなんかもちゃんと描かれていると思う。

あと腐女子の方にもおすすめ。
イギリス人の革命闘士は、わたしは『戦場のメリー・クリスマス』のデヴィッド・ボウイを思い出したりしたけどどうだろう。


『ムチャチョ』はガイマン賞2012では第3位に選ばれた。
http://gaiman.jp/result
この賞、私は読んだ冊数が少ないので投票は遠慮したのだけど、投票すればよかったかな。枯れ木も山の賑わいで。
『闇の国々』の1位には異存はないけど、この『ムチャチョ』とかマルジャン・サトラピの『鶏のプラム煮』とか、好きなのが多くて順位は付けにくいな。
こんな投票が成立するほど海外の漫画が訳されるようになるとは感慨深い。


ユーロマンガの解説ページ

BDfile(ベデフィル)のエマニュエル・ルパージュ氏インタビュー動画

以下、アマゾンにリンクを。

『夜になるまえに』
キューバの作家レイナルド・アレナスの波乱万丈な自伝。
「“おれたち”のようなものがキューバでどんな目にあうか知ってるか?」に答えるために。


革命とセクシャリティってことで関連するかな、と。映画版もよかったなあ。
posted by 読書家 at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画、画集など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月08日

『メタ・バロンの一族』 アレハンドロ・ホドロフスキー (著), フアン・ヒメネス (画)



メタ・バロンの一族 上・下
アレハンドロ・ホドロフスキー (作), フアン・ヒメネス (画), 原正人 (翻訳)
(ShoPro Books)

 http://books.shopro.co.jp/comic/overseas/metabaron.php

『L'INCAL アンカル』(ホドロフスキー作、メビウス画)のスピンオフ。

『アンカル』の続編というわけではないので、どちらを先に読んでも良いと思う。
いや、こちらを先に読んじゃうと、なんじゃこりゃ、ってなるかな。
まずは正編『アンカル』を読んで、どういう世界か把握してからの方がいいかもしれない。
BDfileベデフィルでメタ・バロンを紹介してくれている。『アンカル』未読の方はまずこちらをどうぞ。

さて『メタ・バロンの一族』
宇宙最強の殺し屋、メタ・バロンの一族の物語。
ギリシャ悲劇に触発されたという、復讐、近親相姦、戦争など、凄まじい暴力に彩られた一大サーガ。

全宇宙を股にかけたストーリーは壮大にして滅茶苦茶。
ワイドスクリーン・バロックってこういうのを言うのかな? 実は定義をよく分かってないんだけど。
父親との対決とか肉体損壊とか、ホドロフスキーらしい試練の物語でもある。『アンカル』では控えめだった残虐描写もひどい。
でも、ここまで何でもありだと、正直どうでもよくなってこないこともない。
もちろん殺伐としているばかりではない。語り手役と聞き手役のロボットの掛け合いも幕間狂言みたいになってて楽しい。ちょっと驚くどんでん返しもある。

やはり見所はヒメネスの絵だろう。
この野放図なストーリーを見事に映像化したヒメネスの画力には驚く。
緻密かつ濃厚。
神秘性とかは感じさせず、あくまで下世話な感じでこの残酷劇を描ききる。
メビウスの絵の方が好きだけど、メビウスの淡泊な絵柄ではここまで表現できなかったろう。
制作方法も対照的らしくて、天才的ひらめきで素早く描くメビウスと、入念な計画のもとに描き込んでいくヒメネス、というところのようだ。

下巻巻末のホドロフスキーのインタヴューでメビウスの仕事ぶりなんかも読めて興味深い。
ホドロフスキーのインタヴューでは映画にも触れている。幼いころを過ごしたチリ北部での経験が元になっている映画を半分撮ったそうだ。最近出た自伝『リアリティのダンス』では幼少年時代の描写がマジックリアリズムのようで面白いらしいので、すごく楽しみになってきた。完成するといいな。
エル・トポの続編を撮るって話も聞いたこともあるけど、触れられてない。ぽしゃったのかな。

上巻巻末にはホドロフスキーやヒメネス自身による解説もたっぷりあってうれしい。




『リアリティのダンス』ホドロフスキーの自伝。
まだ読んでないけど、書評によると、暴君だった父親との葛藤が大きなテーマになっているらしい。自伝なのに魔術的リアリズムで描かれたチリでの幼少年期が読みどころのようだ。
映画やマンガについての話はほとんど無いらしいのが残念だけど。
なお私が読んだ書評は日経新聞の中条省平さんのもの。
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXDZO48779610U2A121C1MZC001&uah=DF_SEC3_CA_S1_
柳下毅一郎さんも面白すぎる!と絶賛。http://book.akahoshitakuya.com/post/13/63630521



L'INCAL アンカル (ShoPro Books) [単行本]
アレハンドロ・ホドロフスキー (著), メビウス (イラスト)
こちらも必読。



『エル・トポ』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。
最初に見たときの衝撃は忘れられない。


『ホーリー・マウンテン』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。


『サンタ・サングレ 聖なる血』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。
綾辻行人さんが一番好きな映画に挙げていたな。ところで「サンタ・サングレ」って言葉は「まったく!」みたいな意味でも使うらしいですね。今読んでる漫画『ムチャチョ』によると。



なお『メタ・バロンの一族』は「ガイマン賞2012」の第6位に選ばれた。
ちなみに1位はブノワ・ペータース作 フランソワ・スクイテン 画の『闇の国々』
(感想 http://dokushoburogu.seesaa.net/article/255370353.html
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2012年11月25日

『マンガ 平壌』 ギィ・ドゥリール作

『マンガ平壌 : あるアニメーターの北朝鮮出張記』
ギィ・ドゥリール著 、桧垣嗣子訳 明石書店 2006年刊



アングレーム国際漫画祭の、本年度の最優秀作品賞を受賞したのはギィ・ドゥリール作、
『Chroniques de Jérusalem(エルサレム時評)』だそうだ。
BDfile〔ベデフィル〕より
http://books.shopro.co.jp/bdfile/2012/03/2012.html
ギィ・ドゥリールって聞き覚えがあるなと思ったら、『マンガ 平壌』を描いた人だった。

『マンガ 平壌』は翻訳が出たときに読んだ。
ギィ・ドゥリールは1966年、カナダ・ケベック州生まれ。アニメーターとして、2001年5月から2ヶ月間、フランスのテレビアニメの仕事で平壌の朝鮮科学教育映画撮影所に派遣される。
その時の体験を描いた紀行漫画が『マンガ 平壌』だ。

北朝鮮についての言説は、情報が少ないからしょうがないとはいえ画一的になりがちだけど、フランス人漫画家がアニメーション制作をとおして見たユニークな北朝鮮が興味深い。
淡々としたユーモアもあっておもしろかった。
金日成バッジの無限連鎖とか(バッジの中の金日成がつけているバッジの中の金日成が・・・)。
コルト・マルテーズを作りに来ている人も出てきた。

『エルサレム時評』も訳されるといいな。最近のBD翻訳ラッシュを考えれば大いに期待できる。

『パレスチナ』ジョー・サッコ著 いそっぷ社
これもあわせて読みたい。


北朝鮮は知る人ぞ知るアニメ大国・・・なのだろうか。私は知る人じゃないので良く知らないが。
私が知ってる範囲で言うと、確かルネ・ラルー監督がフィリップ・カザの絵で作った『ガンダーラ』は、実際の制作は北朝鮮でやったはずだ。もう四半世紀も前の作品だが。
東欧で作った『時の支配者』に比べると明らかにレベルが低い。ルネ・ラルーのような巨匠でも資金を得るのは難しかったんだなあ、と残念になる出来だった。
内容はあまり憶えてないけど、抑圧されているミュータントたちが全体主義国家に対し叛乱を起こす話だったと思う。
画一的なロボット軍隊みたいなのがザッ、ザッ、と行進するような映像が印象的だった。これを北朝鮮で作ったのというのが皮肉な感じがする。
関係ないけど、ロボットの胸に赤丸がついてて、映画見たときは、これ日の丸かなあ、日本批判なのかなあとか気に病んだりもした。日本が世に憚かっている時代だったので・・・
あと、最後に巨大な肉の塊みたいな知性体(?)が出てきて、これって漫画版ナウシカのラストに影響与えてないかなあと思った記憶もある。




ルネ・ラルーを見るならやっぱり『ファンタスティック・プラネット』からですね。絵はローラン・トポール。


メビウス追悼のためには『時の支配者』も観なくては。娯楽映画として一番よくできてると思う。

wowowのノンフィクションWで、「フランスアニメが世界を獲る日 〜小さな街が生んだ奇跡のCG学校〜」というのをやっていた。時代は変わった。
http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/101554/
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2012年10月21日

『ハビビ』 クレイグ・トンプソン 著



『Habibi』T、U(二巻で完結)
クレイグ・トンプソン 著, 風間賢二 翻訳 2012年 TOブックス 刊


本国アメリカで大変高い評価を受けているグラフィック・ノベル。
著者のクレイグ・トンプソンはこの『ハビビ』で2012年アイズナー賞のベスト・ライター/アーティスト賞を受賞した。

これは滅多に出会えないようなすごいマンガだと思う。
上下巻あわせて700ページあまり、濃密な世界に圧倒された。
危機に瀕した黙示録的な世界を舞台に、荒々しくも詩的で美しい物語が展開する。

アラブ世界のどこか。
貧しい少女ドドラは幼妻として書記の男に嫁がされる。
男に読み書きを習い、多くの物語を覚えるが、盗賊にさらわれ、奴隷となってしまう。
彼女は幼い黒人の男の子チャム(後にザム)を救けて、共に沙漠に逃れる。
砂漠に置き去りにされた廃船で、二人きりの生活が始まった。
だが彼らを過酷な運命が襲う・・・。

というのが主筋。
この主筋も力強く感動的だけど、千夜一夜物語のように、ドドラが語る数多の物語が挿入され、絡み合いながら進行する。
これがまた面白い。
ソロモン王とシバの女王、アブラハムの生け贄、ノアの方舟など。
旧約聖書、コーランのほか、たぶんアラブの民間伝承だと思う。
主にコーランから取られているらしいけど、私が知っているお話とは微妙に異なっていて、コーランを読んだことのない私には新鮮だった。

絵も素晴らしい。
みっちり描き込まれたイスラム文様やアラビア文字のカリグラフィーに目眩がおこりそうだった。
数秘術に魔方陣、アラビア文字の象徴性が、暗喩に満ちた絵で表現される。
まさに魔術的。


TOブックスの紹介ページ
http://www.tobooks.jp/books/book_072.html
立ち読みもできる。絵柄は一見古くさく感じられるかもしれないけど。

詳しい紹介が「漫棚通信ブログ版」に
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-b662.html


BGMにアラブ歌謡などを流してたのだけど、意識して聴くと「ハビビ」という言葉はよく歌詞に出てくるようだ。
一般的な言葉なのだな。
例えば・・・
Staiffi / Turkish Tango - YouTube
Staiffi Et Ses Mustafa's(スタイフ・エ・セ・ムスタファス)の"Turkish Tango(ターキシュ・タンゴ)"
題名は"Turkish"だけど、トルコじゃなくてアラブだろ、とのコメント多数。
この歌手は日本では「悲しき60歳」 (ヤ・ムスタファ)で知られてる人のようです。
ついでにリンク
MUSTAFA - STAIFFI - YouTube

Fairouz - Rajeen Ya Hawa - YouTube
ご存知レバノンの歌姫、フェイルーズ(またはファイルーズ)による「愛よ、われらは戻った」


「アラブ歌謡の女王たち〜ウム・クルスーム、ファイルーズ、アスマハーンを歌う」
このCDはチュニジア出身のドルサフ・ハムダーニが、アラブ歌謡の女王たち、ウム・クルスーム、アスマハーン、そしてファイルーズの歌を歌ったもの。

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2012年09月03日

『大長編ドラえもん のび太の大魔境』 藤子・F・不二雄 著


今日はドラえもん生誕の100年前だそうだ。
きのう藤子・F・不二雄さんについて書いたのは偶然だけど、何か縁を感じる。

子どもの頃、本当にドラえもんが好きだった。
セリフを数行聞いただけで、それが第何巻のなんという話に出てくるセリフか、たちどころに言い当てることが出来た。
ドラえもん博士として周囲の尊敬を集めていたことは言うまでもない。


今日は、先月に見た『映画ドラえもん のび太の大魔境』について書こう。

やはりドラえもんはいいなあ。わたしの帰るべき場所はここだ,という感じがする。
原作に比べると良くないんだけど,それでも、子どもの頃のわくわく感が懐かしく甦ってくる。

子供の頃は、原作から改変されているのが不満だった。わざわざつまらなく変更するのはなぜだ! と義憤を感じていた。
でも今回見直して、意味のある変更もあることに気づいた。

以下、ネタバレがあります。

原作だと、空き地に置きっぱなしになっていたどこでもドアを近所の人に燃やされてしまう。ワニに襲われて窮地に陥ったドラえもんが、四次元ポケットからどこでもドアを取り出そうとすると、ドアが燃えさしになっているのに気づくのだ。
でも考えてみると、四次元ポケットに遠くのものを取り寄せられるなんて機能はないはずだ。取り寄せバッグじゃあるまいし。それができるなら土管においてきたスモールライトとかも取り寄せられることになってしまう。
ドアは四次元ポケットに入れて持ち運んでいるはずで、空き地に残っているはずはない。
アニメ版ではこれが改変されていて、四次元ポケットから取り出したどこでもドアをワニに壊されることになっている。
あまりおもしろい展開とは言えないが、矛盾は解消されている。
ちゃんと意味のある改変だったのだな、と今回初めて気がついた。
アニメ版のスタッフにお詫びしたい。

あと、子供の頃は、先取り約束機で助けを呼ぶというアイデアに感服していたのだけど、どうせタイムマシンで戻ってくるなら先取り約束機とは関係ないんじゃないか? と気づいてしまった。
いや待てよ、5人の助けが来なければ彼らは生き延びられなかったろうから、後でタイムマシンに乗って助けに戻ることも出来なかったわけか。
タイムパラドックスの罠を回避し「助かるサイクル」に移行するためには、先取り約束機で約束することが必要だったのか。
やはり感服に値する。


話は変わるが、なんで漫画家の名前に「先生」ってつける人が多いんだろう。ちょっと違和感がある。小説家とかにはあまりつけないと思うけど。
手塚治虫の崇拝者による呼び方がひろまったのかな。○○先生にお便りを出そう!とか雑誌に書いてあったせいかな。

 藤子・F・不二雄大全集|小学館


映画ドラえもん のび太の大魔境【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]


『藤子・F・不二雄大全集 大長編ドラえもん 1 』
 第1巻では「のび太の恐竜」、「のび太の宇宙開拓史」、「のび太の大魔境」の3作品を収録

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2012年09月01日

『藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣』 藤子・F・不二雄 著





「みきおとミキオ」についての長年の疑問が解決した。
私が子どもの頃に読んでいたのはてんとう虫コミックス版なのだけど、犬のポンチが途中から急に人間の言葉を話し始めたのはなぜか不思議だったのだ。
今回、『藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣』で初めて読んだエピソード「ポンチがしゃべった」によると、手術をして、言語中枢をうえつけて舌と声帯を人間に近くした、ということが分かった。

タイムトンネルの仕組みも説明されていた。
「タキオンの吹きだまりが、時間をゆがめてさ。
三次元空間を時間軸が・・・。」
「小学五年生」掲載の第一話でミキオがそう説明していた。てんとう虫コミックス版には「小学四年生」の第一話が採られていたのだが、その説明はなかった。

以前「バケルくん」についても、藤子・F・不二雄大全集のおかげで判明したことがあった。
複数の人形を同時に操る場合、心は一つしかないからみんな同じ行動しかとれない、という設定だったはずなのに、エピソードによってはばらばらに動いているので、ご都合主義かと思っていた。
しかし、大全集を読んだところ、練習したおかげで徐々にばらばらに動けるようになった、ということがちゃんと説明されていた。



てんとう虫コミックス版の収録作を誰が選んでいたのか知らないけど、その後に影響するような設定説明的エピソードを省いたのはなぜだろう。子どもは細かいことを気にするものなのに。


わたしは藤子不二雄さんの漫画の中でも特にSF系が大好きで、「みきおとミキオ」のほかにも、「モジャ公」とか「21エモン」とか、こういう漫画をもっと読みたいなあと思ってた。
インタビュー等によると藤子さん自身も気に入っていたそうだ。しかしSFは人気が出ないためにあまり描く機会がなかったのだという。
このおもしろさを理解できない昔の子どもの愚昧さに憤りを禁じ得なかったものだ。
今でも残念に思っている。

 藤子・F・不二雄大全集|小学館
 http://www.shogakukan.co.jp/fzenshu/

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2012年06月17日

「チェーザレ 破壊の創造者」 惣領 冬実 著

「チェーザレ 破壊の創造者」
惣領 冬実 著




チェーザレ・ボルジアを描く本格的な歴史マンガだ。

WOWOWで「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」というドラマが始まったので、これを機に、と思って読み始めた。評判も良いようだし。

9巻まで出てるようだけど、とりあえず5巻まで読んだ。

私はチェーザレ・ボルジアについては高校で習った程度にしか知らないので、興味深く読んだ。勉強になる。
とてもよく調べてあって、専門家を交えて原語の資料まで渉猟している。事実関係を突き詰めた上で、もっとも妥当と思われる説を採る、という方法。

歴史物を読んだり見たりするときって、この時代にそんなわけないだろ、と突っ込みたくなることが多いけど、その点安心して読める。
15世紀のピサでこんな現代人みたいな議論があったのかなあ、と疑問に感じたところもあったんだけど、当時の一次資料とかまで参考にして描いているらしいので、私の方が間違ってるに違いない。

絵もきれいだ。横顔の下唇あたりの描き方とか好き。背景も良い。絵画などを参考に、当時の町並みまで再現しようとする姿勢もすばらしい。

ただ学習マンガとしてはいいとしても、マンガとしておもしろいかというと、今のところそれほどでもない。
まだ1491年でチェーザレは学生にすぎないので、あまり動きがないのは仕方ないか。陰謀が本格的に動き出すのは翌年のコンクラーベあたりかららしいので、これからが佳境に違いない。

あと台詞が説明的すぎると思った。人間関係とか社会背景とかをすべて登場人物が台詞で説明するので、会話があまりにも不自然だ。登場人物が書き割り的で生き生きしてこないのはそれも一因では?
説明はナレーションで処理した方が良いような気がする。(マンガの場合も"ナレーション"でいいのかな)

5巻までかかってまだ1年分も描かれてないんじゃないかな。
このペースだと相当な大河マンガになりそうだけど、これは読み続けたい。

Ego sum Papa.jpg
チェーザレの父親ロドリーゴ・ボルジア(アレクサンデル6世)を悪魔として描いた16世紀の彫版画
ego fum papa「私は教皇である」

WOWOWでやってる「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」はかなり扇情的でおもしろい。
1492年のインノケンティウス8世崩御の場面から始まって、権力争いが激化していく。
西洋版「苦肉の計」で、ミケロットをチェーザレが鞭で打つ場面がある。「もっと強く打ってください!」
いや、だからどうって訳じゃないけど、喜ぶ人もいるかと思って・・・。すみません。

歴史考証的にはどうなのかな。マラリアで死んだ人について「蚊に殺されたの?」とルクレチアが聞く台詞が出てきたけど、蚊がマラリアの原因だってことは知られてたんだろうか。
「マラリア」の語源は古いイタリア語で「悪い空気」の意味だそうで、中世イタリアでは沼地の瘴気が病気の原因と思われてたって聞いたけど。マラリア原虫を蚊が媒介するってことがわかったのは19世紀末のはずだ(『カルカッタ染色体』って小説を読んでマラリアにちょっと詳しくなったので、ここぞとばかり攻める)。
まあ知られてたのかもね。科学的にはともかく、蚊が関係してるらしいってことは前から気付いていたのかも。

イマジカBSでも「ボルジア 欲望の系譜」というドラマを放映する。これもロドリーゴが主人公らしい。
http://www.imagica-bs.com/borgia/
先行放送をちょっとだけ見たけど、こちらも1492年から始まるようだ。
ピサ大学の教室でチェーザレとジョヴァンニ・デ・メディチが向かい合うシーンは、マンガ読者にはちょっとうれしかった。
wowow版はニール・ジョーダン、イマジカBS版はオリヴァー・ヒルシュビーゲル(「ヒトラー 〜最期の12日間〜」)と映画監督がかかわっている。
どっちも楽しみだけど、同時期に二つってなぜ? ボルジア家ブームなのか。
いまはBSフジで「三国志」を毎日見なければいけないのに、ドラマ漬けになってしまうな・・・。

それはともかく、早くGame of Thrones を日本でも放送してほしい。
(これから機会があるごとに言うことにしよう))

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2012年05月20日

『鶏のプラム煮』 マルジャン・サトラピ 著



『鶏のプラム煮』 (ShoPro Books)
マルジャン・サトラピ (著), 渋谷豊 (翻訳)

2005年度アングレーム国際漫画祭最優秀作品賞受賞

最近は多くのBDが翻訳されるようになったけど、中でも好きなのがマルジャン・サトラピ。
この『鶏のプラム煮』もとてもおもしろい。

マルジャン・サトラピ自身の大おじさんが主人公のモデルになっているそうだ。
1958年のテヘランを主な舞台とした味わい深い物語。
ナーゼル・アリはタール(イランの伝統的弦楽器)の一流の奏者。だが愛用のタールを壊され、悲観した彼は自ら死を選ぶのだが・・・。

家族への幻滅、報われない愛、自死。と、かなり苦いお話だけど、ユーモア漂う簡潔なタッチで描かれるので、陰々滅々となることはない。むしろ楽しく読み進めるうちに、人生の哀感が心にしんと染みいってくる。

ストーリーテリングのうまさが光る。

市井のイラン人の生活や心情に触れられるのも魅力。
今回は政治や社会について多く語られるわけじゃないけど、革命前の、かなり西洋化されたテヘランの風景は今のイラン映画では描けないだろうし、貴重な機会じゃないかと思う。
ナーゼル・アリの母親がダルウィーシュ(スーフィズムの修道僧)だったりとか、イランの精神世界の一端を垣間見せてもくれる。

サトラピ自身とヴァンサン・パロノーの手で実写映画化もされた。日本では『チキンとプラム』の題で東京国際映画祭で上映されたそうだけど、未見。アニメーション版の『ペルセポリス』は素晴らしかったし、これも見たい。
ただタールではなくヴァイオリンに変更されてるそうだ。タールの名手をキャスティングできなかったのかな(と思ったけど、下記のインタビューによるとちゃんと意図があるそうだ)。

映画『ペルセポリス』の感想
ぷらねた 〜未公開映画を観るブログ〜 で、映画「チキンとプラム」(という邦題だったらしい)についてのサトラピのインタビューを訳してくれている。
ぷらねたさんの「チキンとプラム」感想はこちら→ http://planeta-cinema.at.webry.info/201111/article_3.html すばらしい映画だそうだ。




映画版『ペルセポリス』

「Tar solo」とかで検索するとタールの独奏が聴けるようだ。これとか。
http://www.youtube.com/watch?v=X4aQg8oXuiI

私は「世界民族音楽大集成:29:イランの音楽」というCD(廃盤?)でダリウシュ・タラーイDariush Talai氏のタール独奏を聴きながら読んだ。タールは2曲だけだけど。
映像 http://www.youtube.com/watch?v=zLjdJ890ezE


追記:映画版の日本公開が決まったそうです。
   邦題は「チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢」。
   11月10日から全国順次公開予定
   http://eiga.com/news/20120726/10/
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2012年03月03日

『闇の国々』ブノワ・ペータース作 フランソワ・スクイテン画





著者 ブノワ・ペータース
画 フランソワ・スクイテン
訳 古永真一/原正人


メビウス、エンキ・ビラルと並ぶBD三巨匠の一人と称されるスクイテン、初の日本語訳単行本。

え、スクイテンて誰? と思う人もいるかもしれないが、すなわちシュイッテンのことだ。
François Schuitenは今までシュイッテンと表記されることが多かったけど、スクイテンと発音するのが正しいようだ。ただしシュイッテンが誤りというわけでもないのかな。訳者あとがきによると両方とも使われるらしくて、よくわからない。
(両者が平行して存在しているなんて、このマンガの内容を象徴してるが如くだなあ)

なおBD(ベーデー)とはバンド・デシネの略でフランス語圏のマンガのこと。念のため。

白黒(一部カラー)で4千円もするので、買うべきか迷っていたのだけど、結局買って良かった。傑作。400ページもあって密度も高い。質量ともに充実。
昼飯を10日ほど抜いたと思えばたいして高くない。
SF評論家の大森望氏も推薦してる。
http://blog.livedoor.jp/ten_years_after/archives/52825108.html
本の雑誌3月号では五つ星をつけて絶賛(「過去の新刊めったくたガイド」にリンク張ろうと思ったらとっくになくなってた)。

3巨匠のなかでも、日本語に訳された意義がもっとも深いと思う。つまりブノワ・ペータースによるシナリオがとても良いのだ。
バンド・デシネって絵がきれいなのはわかるけどストーリーはどうなの? と思ってる人は、まずこれを読むといいんじゃなかろうか。
もっとも、カフカとかボルヘスとかに比べられるような、一筋縄ではいかない内容なので、読者を選ぶかもしれない。(私は選ばれましたけどね、と暗に言っている。)

SFというよりは奇想小説の系譜に連なるのかな。我々の世界と平行して存在するらしい「闇の国々」を舞台とした連作。
「闇の国々」シリーズは外伝を除いて現在12巻出版されているそうだが、そのうち次の3巻を選んで収録している。

「狂騒のユルビカンド」
(1985年アングレーム国際漫画祭最優秀作品賞受賞)
 整然とした都市ユルビカンドに出現した謎の立方体。それは毎日成長を続け、都市に異常な混乱をもたらす。
 主人公のユーゲン・ロビックは、シンメトリーや秩序に取り憑かれたユルバテクト(都市計画建築家)。立方体の謎を解き秩序を保とうとするが・・・・
 全体主義建築、未来派、アール・デコなどが融合した都市の描写が面白い。

「塔」
 ブリューゲルが描くバベルの塔を思わせる巨大な塔。修復士のジョヴァンニ・バッティスタは、塔の謎を探ろうと、塔縦断の旅に出る。
 ジョヴァンニ・バッティスタは、オーソン・ウェルズ演じるファルスタッフがモデルだそうだ。名前は版画家のジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージからとっている。

「傾いた少女」
 ある日突然身体が斜めに傾いてしまった少女メリーの孤独な遍歴。
 並行して描かれるのは謎の天体現象。ジュール・ヴェルヌが描きそうな世界だが、ジュール・ヴェルヌ本人も登場。


どれもとても凝っている。
架空の論文や書物をでっち上げたり、写真マンガを使って「こっちの世界」との緊張関係を表したり。
実在の人物も時に絡み合い、多層的な世界を築いている。

3つとも良いけど、私は特に「塔」が好き。世界そのもののような巨大な塔の描写がすばらしい。そしてあまりに奇妙な結末。

スクイテンの絵はピラネージなどの影響があるようだ。銅版画的な緻密な筆致で壮大な都市群を描き出す。
ピラネージのほかにもダ・ヴィンチ、未来派、ジュール・ヴェルヌなど、過去に夢想された都市や機械、異様な建築群が見事に再現される。

基本は白黒だけど、時々色が入る。
特に「塔」におけるカラーは鮮烈だ。
色づけもすべて自分でやるそうだ。繊細な色使いが美事。

次は是非カラーの作品を訳していただきたい。


http://wakuteka.jp/archives/5313
訳者のお一人、原正人さんのコラム「なぜ私はヨーロッパマンガを愛するようになったか」で、「闇の国々」のシリーズが紹介されている。

http://fr-chocolat.com/podcast-chocolat/708-278-bd-et-ecole-criolo
ポッドキャストのフランス語学習番組「Chocolat!」で、
もう一人の訳者古永真一さんが、「闇の国々」について語っている。

BDfile
ShoProがBDのブログを立ち上げた。BDの翻訳もいよいよ軌道に乗ってきたかな。

piranesi1.jpgpiranesi2.jpg
これはピラネージの版画。さすがにスクイテンもここまで緻密ではないか。
http://sala17.wordpress.com/2010/03/10/giovanni-battista-piranesi-1720-1778/

http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
上野の国立西洋美術館で3月6日からピラネージ「牢獄」展をやるそうだ。版画素描展示室だから小規模だと思うけど。
同時にやる「ユベール・ロベール−時間の庭」展の方も、ちょっと『闇の国々』の世界を思い出させる。

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2012年01月09日

『エデナの世界』メビウス著



『エデナの世界』原タイトル:Le Monde d'Edena
 メビウス(Moebius) 著 原正人 訳 TOブックス刊行

アンカル以後のメビウスの代表作。
近ごろ外国のマンガが続々と訳されていて、貧乏人には嬉し痒しの日々が続いている。
『エデナの世界』は、メビウスのファンなら麦を食ってでも買っておきたい長編代表作だ。
フランス原書では本編5巻にスピンオフ1巻の計6巻で出版されたものを、一冊にまとめて邦訳された。

二人の宇宙飛行士が不思議な惑星エデナで冒険する、というSF。
シナリオもメビウス本人が担当している。めずらしく一貫したストーリーがあるので入りやすい。

とは言え、やはり主役は絵だろう。
巻ごとにかなり絵柄が変わるので、多彩な画法が楽しめる。
とりわけ第3巻の色使いが絶妙なのだが、なんでこれだけ違うのかな。メビウス本人が彩色したってことなのかもしれない。
巻末で二人の漫画家(浦沢直樹氏と夏目房之介氏)が対談しているのだけど、礼賛するばかりであまり具体的なことを語ってくれないのが残念。技法とか、プロらしい意見を聞きたかった。

残念ついでにもう一つ言うと、フランス原書では各巻の巻末に解説が付いているそうだから、それも訳してほしかった。本編を読めばわかる、というマンガでもないので、解読の手がかりがもっとほしい。
また『エデナの世界』の世界を描いた一枚絵ももっとあるはずなので、大判で収録してほしかった。

ストーリー自体は特に難解というほどでもなく、読み進めるのに障害はないのだけど、何を言いたいのかよくわからなかった。
深い意味があるのかもしれないし、単なる思いつきで書いたのかもしれない。麻薬はもうやめてたんだっけ。
やはり絵を楽しめばいいマンガなのだろうか。結論は控えておく。
内面世界と外的世界が入れ子構造のようになっていて、互いに影響し合っていたりする。
アルザックにも似たようなエピソードがあったし、メビウスにとって重要なテーマなのかもしれない。

ユーロマンガ Vol.3に「エデナの世界」スピンオフ作品が掲載されてた。
http://www.euromanga.jp/title/reparations/697

メビウス(ジャン・ジロー)のオフィシャルサイト


ユリイカ誌のメビウス特集号
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2011年08月27日

『SARU』 五十嵐 大介 著




『SARU』 上下巻
 五十嵐 大介 (著)
 小学館 IKKI COMIX


五十嵐大介さんのマンガは最近「はなしっぱなし」を初めて読んで、絵のうまさに驚いた。
幻想シーンの描き方が特に良くて、ファンになった。

五十嵐氏の最新作「SARU」を読んでみた。


交通事故に遭って以来、何者かに憑依されたフランス人少女は、自らを「斉天大聖・孫悟空」と名乗る。
少女に導かれ、バチカンのエクソシスト、ブータンの僧侶、なぜか日本人留学生の少女らは、驚くべき世界の成り立ちを知る。
世界に偏在する「猿」の魔物は何を意味するのか。跳梁する謎の暗殺団。見いだされた失われたアークやアロンの杖。インカの征服者ピサロや宣教師フランシスコ・ザビエルが蘇る。さらにはノストラダムスが予言したアンゴルモアの大王の覚醒・・・。
と盛りだくさん。
アングレーム国際マンガフェスティバルで有名なアングレームも大変なことに。
失われた世界のバランスを彼らは回復できるのか。


諸星大二郎ばりの伝奇まんがだ。
五十嵐氏も諸星大二郎を意識してるんじゃないかって気がする。「おらといっしょに、ぱらいそさいくだ」っぽいイメージや、『暗黒神話』を思わせる年数がでてきたりする。

スケールが大きいし、怪しげなオカルト的世界説明も楽しい。
でもちょっと短すぎるかな。事態がエスカレートしていく過程をもっと丁寧に描いてほしかった。
謎の説明もみんな誰かが言葉で説明してくれちゃう。主人公たちが自ら知恵と行動力で解明していく、という展開があまりないんだよなあ。
駆け足のミステリースポット観光案内みたいな感じになっちゃってる気がする。水増しされるよりはいいのかな。
時々やや生硬な議論が出てきたりもする。

絵についてはさすが。
ザビエルの調伏シーンとか、はっとするようなイメージがいくつもあって、やっぱりすごい。

主要人物の一人として日本人の少女が出てくる。日本人なのに目が大きく脚もすらっとしていて、ちょっと不自然な感じがする。
五十嵐大介のほかのマンガも同じことなんだけど、特にこれは国際色豊かなお話なので不自然さが目立つ。
もっと日本人の民族的特徴を尊重すべきではないだろうか。
こんな日本人だっていていけないわけではないが。
ナカノ・ミヨコなる中国文学研究者もカメオ出演・・・これ中野先生に失礼なんじゃないかなあ。


ところで、ザビエルとエグゼビアって同じ綴りなんだね。五十嵐大介版「X-メン」だな。別に彼らはザビエルの部下って訳ではないが。


伊坂幸太郎の小説SOSの猿』と連動してるそうだ。
あまり評判良くないようだけど、どうしようかな。

五十嵐大介周辺日誌


ラベル:saru 五十嵐 大介
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2011年08月07日

『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 著




『西遊妖猿伝』西域篇がいつのまにか3巻まで出ていたのか。連載が再開されたのは知っていたけど、これ読むためには大唐篇を読み直さないといけないよな、と思っているうちに時が過ぎた。

とりあえず2巻まで読んだ。
やっぱり良いなあ。
冒頭もたつく以外は実に快調。
やはり諸星さんは全部読まなければいけない。

私は諸星大二郎のファンで、ほとんど読んでるはずだけど、正直言って、諸星さんは大長編は不得意なんじゃないかって気がしてる。特に人物の心情や行動の動機が不自然というか、プロットにうまく絡んでない。
悟空を玄奘に結びつけるのもちょっと無理をしてると思う。

でも唐を離れここまで来てしまったからには、あとは一緒に取経の旅を続けるしかないので、その辺の無理な感じがなくなっている。

ややこしいしがらみを唐においてきたせいか、すごくシンプルで軽やかな再スタートとなっている。
沙悟浄の登場も鮮やか。いよいよ西遊記の始まり! という感じだ。

諸星さんが中央アジアを描くのって初めてではないだろうか。ゾロアスター教とか新鮮。一行の旅が進むにつれて新境地を開いていってくれそうでわくわくする。

今後はやっぱりインドのハヌマーン信仰とかと結びついていくのかな。
初期の『孔子暗黒伝』などのような驚天動地の大技が最後に待っているのだろうか。そうならもちろんうれしいが、それはなくて、このままおもしろい怪奇譚が串団子のようにつながっていくだけでも、私は十分満足するだろう。

怪異の描写が良いのは言うまでもないとして、「栞と紙魚子」などを経てユーモアセンスが格段に上がってると思う。昔は、まじめな人が無理におもしろいこと言おうとしてるような苦しい感じがあったけど。
自然にくすくす笑いがこみ上げる。ひょうひょうたるおかしみ。

子供たちのかわいさも特筆したい。粟特城の双子の活躍が楽しみだ。



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2011年07月24日

『天空のビバンドム』ニコラ・ド・クレシー




ニコラ・ド・クレシーによる傑作ファンタジーマンガ。
すごいなあ。絵のすごさでは世界一かな。
いや世界中の漫画を知ってるわけではないですが。

「ユーロマンガ」誌に連載されていたものより版が小さくなってる。
翻訳も若干修正されている。

家にある画材をすべて使ったという多彩なアートワークがすばらしい。
物語も魅力的。舞台は架空の都市ニューヨーク=シュル=ロワール。アザラシのディエゴは市の教育者たちに捕まり、「愛のノーベル賞」を目指して特訓を受けることになる。というのが主筋だけど、悪魔は出てくるは、なんかよくわかんないものはたくさん出てくるは、奇想天外なファンタジーだ。
ただし、わかりやすい物語やそれを無批判に受け入れる大衆への諷刺が込められているので、当然わかりにくく、一筋縄でいかない展開。物語ることをめぐる物語。誰が語りの主導権を奪うのか。
というメタな現代文学のような話だ。
だけど、まあそうした思想は思想として承るとして、まずはグロテスクな奇想の奔流に身を任せたい。

ドイツ表現主義、特にジョージ・グロスの影響を受けたそうだ。なるほど。でもやっぱりアンソールにいちばん近いような気がする。

第三章になると、あれ、家の画材が尽きてきたのかな? と思うほど色彩がシンプルになる。
インタビューによるとデジタル着色をほかの人に依頼したのだそうだ。前の2章に比べると物足りないけど、デジタルでここまでできるとは。もっとも後から塗り足したそうだけど。
ニコラ・ド・クレシーがデジタル着色を使いこなすようになったらまたすごいものができるかもしれない。今のところの成果はProsopopus(プロゾポプス)
に見られるそうだ。
画像検索で見た感じだと、まだいまいちかな。

『天空のビバンドム』ニコラ・ド・クレシー作品集 | 公式サイト

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2011年07月03日

『アライバル』 ショーン・タン著




美しいグラフィック・ノベル。
アメリカやオーストラリアへの移民の物語を、ファンタジーとして幻想的に表現している。
モノクロで、一切言葉はない。とはいえ結構コマ割が細かく説明的で、解釈に困るようなことはなかった。

異世界ファンタジーだけど、完全な別世界というより、現実の移民の物語を不思議の世界のほうへ少しずらしたような感じだ。
中国人やユダヤ人やロシア人と思われるような人たちの、故国での苦難と、移民先での生活ぶりが、移民への敬意をこめて温かく描かれる。

絵も、イメージの大爆発、という感じではなく、繊細で郷愁を誘うような描線で、穏やかで心地よい世界を描いている。

雰囲気としては、「遠い国から」の諸星大二郎を、うんと絵をうまくしたような感じかな。あと、たむらしげるとか。絵はだいぶ違うけど。

不思議な生き物たち、ノスタルジックな機械、とても楽しい。


ショーン・タン自身も、父親がマレーシアからオーストラリアへの移民だそうだ。中国系かな。


ただ、原住民の存在が描かれてない・・・とは限らないか。あそこの人たちが原住民なのかもしれないし。

ショーン・タンの作品は、あわせて『レッドツリー―希望まで360秒』という絵本を読んだ。ほんの数ページの小品。こちらは色鮮やか。青い鳥みたいなファンタジー。やはりとても美しいけど、お話はやや理に落ちた、という感じもする。

ショーン・タンのホームページ
http://www.shauntan.net/

字のないインタビュー
http://t.co/nNngwv6


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2011年06月19日

『キック・アス』マーク・ミラー著



KICK-ASS キック・アス (ShoPro Books)
マーク・ミラー 著、ジョン・ロミータ・Jr. 画


映画版(アマゾンへ
)がすばらしかったので原作コミックを読んでみた。

意外と原作に忠実な映画化だったのだな。でもマンガ版のほうが重くて暗い。
特に最後の方、おたくにやさしくない。映画のような爽快感、高揚感はない。
でも原作の方が納得はできる。リアルな感じがする。
ケイティがそんないい人のはずない、と思いながら映画を見ていたので、そら見たことか、と溜飲を下げた。原作の方がケイティの本性をよく捉えている。

いやケイティについてなんて語りたくなかった。

ヒット・ガールについて語りたい!

だが今は語るまい(ちょっと時間がないので。まあ悪くなかった)。

どうしても映画を前提に考えてしまうので、独立したマンガとしてどうか、というのはなんとも言えない。


絵もなかなかいいね。ベテランの味というか、安心して見てられる。特に絵を目当てに買うほどの魅力はないかな。



『アストニッシングX‐MEN』
ジョス ウェドン(『バフィー 恋する十字架』の人)がライターを務めたXメン。『キック・アス』のデイヴによると「ジョス・ウェドンのX-MENは超最高だぜ! おれはバフィーの大ファンだけど・・・こいつに比べりゃ、バフィーなんてクズだな!」と絶賛。こういうせりふも註で説明してくれるので、アメコミ永年の初心者にとってはうれしい。

小学館集英社プロダクション「キック・アス」公式ページ
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2011年01月23日

『氷河期』 ニコラ・ド・クレシー




氷河期 ―ルーヴル美術館BDプロジェクト―
小学館集英社プロダクション (ShoPro Books)
ニコラ・ド・クレシー (著), 小池寿子 (監修), 大西愛子 (翻訳)


ニコラ・ド・クレシーによるBD。
BD(べーデー、バンドデシネの略)とはフランス語圏の漫画のこと。

地球が寒冷化した未来,氷に覆われた世界で,探検隊がルーブル美術館の遺跡を発見する。彼らは出土した絵画を解釈し,珍妙な人類史を再構成するのだった。

軽くて愉快なSFだ。
批評性もある。美術史の流れに従い分類され位置づけられている泰西名画が、美術史など何も知らない者にはどう見えるか。あまたの裸体像が示すのは「快楽の館」か。肥満した裸の赤ん坊が空に浮かぶ怪現象。
美の殿堂ルーブル美術館もかたなし。

地球温暖化論議がかまびすしい今の世に、寒冷化した未来像を示す反骨精神にも感じ入った(美術品が保存されてないと話が成り立たないからだろうが)

ニコラ・ド・クレシー独特の、豚みたいな太った犬もかわいい。遺伝子操作で生まれた歴史解読犬ハルクは、炭素14を嗅ぎ分けられる。ハルクは人間たちとは別行動で、彫像たちの群れと交流する。


ルーブル美術館出版部が企画したBDプロジェクトの一冊だそうだ。その制約があるせいかどうか,「天空のビバンドム」のような奔放さはないようだ。やや力を抜いて描いたような印象を受けた。分量も少ないし。

「天空のビバンドム」の恐るべき密度に比べると、絵も淡泊な感じ。グロテスクさも少ない。

その分,微妙な色遣いや,ユーモラスな筆致が楽しめるし,ルーブル美術館の名画がふんだんに登場するので,目の楽しみは十分ある


BDが続けざまに翻訳されてうれしい。こんどこそ日本に定着してほしい。みなさん買いましょう。私も金さえあれば全部買うのだが。

http://www.bdcollection.jp/ 国書刊行会の「BDコレクション」ホームページ
http://www.euromanga.jp/ ユーロマンガのホームページ。ヨーロッパのマンガ事情を紹介してくれている。
http://www.asukashinsha.jp/s/crecy/index.html ニコラ・ド・クレシー『天空のビバンドム』のホームページ
http://books.shopro.co.jp/comic/overseas/lincal.php メビウス(画)/アレハンドロ・ホドロフスキー(作)の「アンカル」がついに完訳! すごいねえ。




ニコラ・ド・クレシーの真髄を味わうにはやっぱり『天空のビバンドム』の方かな。ただ判が小さいんだよな。


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