2012年12月08日

『メタ・バロンの一族』 アレハンドロ・ホドロフスキー (著), フアン・ヒメネス (画)



メタ・バロンの一族 上・下
アレハンドロ・ホドロフスキー (作), フアン・ヒメネス (画), 原正人 (翻訳)
(ShoPro Books)

 http://books.shopro.co.jp/comic/overseas/metabaron.php

『L'INCAL アンカル』(ホドロフスキー作、メビウス画)のスピンオフ。

『アンカル』の続編というわけではないので、どちらを先に読んでも良いと思う。
いや、こちらを先に読んじゃうと、なんじゃこりゃ、ってなるかな。
まずは正編『アンカル』を読んで、どういう世界か把握してからの方がいいかもしれない。
BDfileベデフィルでメタ・バロンを紹介してくれている。『アンカル』未読の方はまずこちらをどうぞ。

さて『メタ・バロンの一族』
宇宙最強の殺し屋、メタ・バロンの一族の物語。
ギリシャ悲劇に触発されたという、復讐、近親相姦、戦争など、凄まじい暴力に彩られた一大サーガ。

全宇宙を股にかけたストーリーは壮大にして滅茶苦茶。
ワイドスクリーン・バロックってこういうのを言うのかな? 実は定義をよく分かってないんだけど。
父親との対決とか肉体損壊とか、ホドロフスキーらしい試練の物語でもある。『アンカル』では控えめだった残虐描写もひどい。
でも、ここまで何でもありだと、正直どうでもよくなってこないこともない。
もちろん殺伐としているばかりではない。語り手役と聞き手役のロボットの掛け合いも幕間狂言みたいになってて楽しい。ちょっと驚くどんでん返しもある。

やはり見所はヒメネスの絵だろう。
この野放図なストーリーを見事に映像化したヒメネスの画力には驚く。
緻密かつ濃厚。
神秘性とかは感じさせず、あくまで下世話な感じでこの残酷劇を描ききる。
メビウスの絵の方が好きだけど、メビウスの淡泊な絵柄ではここまで表現できなかったろう。
制作方法も対照的らしくて、天才的ひらめきで素早く描くメビウスと、入念な計画のもとに描き込んでいくヒメネス、というところのようだ。

下巻巻末のホドロフスキーのインタヴューでメビウスの仕事ぶりなんかも読めて興味深い。
ホドロフスキーのインタヴューでは映画にも触れている。幼いころを過ごしたチリ北部での経験が元になっている映画を半分撮ったそうだ。最近出た自伝『リアリティのダンス』では幼少年時代の描写がマジックリアリズムのようで面白いらしいので、すごく楽しみになってきた。完成するといいな。
エル・トポの続編を撮るって話も聞いたこともあるけど、触れられてない。ぽしゃったのかな。

上巻巻末にはホドロフスキーやヒメネス自身による解説もたっぷりあってうれしい。




『リアリティのダンス』ホドロフスキーの自伝。
まだ読んでないけど、書評によると、暴君だった父親との葛藤が大きなテーマになっているらしい。自伝なのに魔術的リアリズムで描かれたチリでの幼少年期が読みどころのようだ。
映画やマンガについての話はほとんど無いらしいのが残念だけど。
なお私が読んだ書評は日経新聞の中条省平さんのもの。
http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXDZO48779610U2A121C1MZC001&uah=DF_SEC3_CA_S1_
柳下毅一郎さんも面白すぎる!と絶賛。http://book.akahoshitakuya.com/post/13/63630521



L'INCAL アンカル (ShoPro Books) [単行本]
アレハンドロ・ホドロフスキー (著), メビウス (イラスト)
こちらも必読。



『エル・トポ』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。
最初に見たときの衝撃は忘れられない。


『ホーリー・マウンテン』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。


『サンタ・サングレ 聖なる血』アレハンドロ・ホドロフスキー監督。
綾辻行人さんが一番好きな映画に挙げていたな。ところで「サンタ・サングレ」って言葉は「まったく!」みたいな意味でも使うらしいですね。今読んでる漫画『ムチャチョ』によると。



なお『メタ・バロンの一族』は「ガイマン賞2012」の第6位に選ばれた。
ちなみに1位はブノワ・ペータース作 フランソワ・スクイテン 画の『闇の国々』
(感想 http://dokushoburogu.seesaa.net/article/255370353.html
posted by 読書家 at 14:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画、画集など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。