2009年05月14日

『ウォーロード/男たちの誓い』ピーター・チャン監督

原題:投名状
日本語題:ウォーロード/男たちの誓い

監督
ピーター・チャン (陳可辛)

出演
ジェット・リー(李 連杰)
アンディ・ラウ(劉 徳華)
金城 武
シュー・ジンレイ(徐 静蕾)


 心揺さぶられる傑作だった。ピーター・チャン監督の新たな代表作だと思う。
 しかし、エンディングにアルフィーの歌が流れるのには愕然とした。感動が一気に冷めていった。なんでこんな非道いことをするんだろう。アルフィーの曲自体は、私は全くミスマッチだと思うけど、好きな人もあるだろうから悪口は言わないでおくが、オリジナルを尊重しないという風潮が腹立たしい。タイアップで商売したいならイメージソングにとどめて宣伝で使えばそれで十分ではないか。なぜ映画の中に使うんだ。そもそも商売に役立っているのか? アルフィーのファンが大挙して映画を観に来るとも思えないが。配給会社には猛省を促したい。監督が了承しているのだとしても、日本の市場について説明、判断する責任があると思う。(オリジナルの曲が良い曲かどうかはしらないが。あまりにひどい曲なので仕方なく差し替えたんだったりして)
 題名もなぜ『投名状』としないんだろう。また変な和製英語みたいな邦題つけおって……と思ったら、どうも正式な英語タイトルが THE WARLORDS らしい。いずれにしても『投名状』の方がずっといい。

 だが文句はこれくらいにして、映画の内容についても触れよう。

 単なる武侠映画ではない、という言い方は、このジャンルを狭くとらえすぎなのかもしれないが、今までに私がみた武侠映画のなかで、人間ドラマとして最も見応えがあった。普遍的で重いテーマ。感情表現の豊かさ。

 実話が元になっているそうだ。清朝末期、太平天国の乱で荒れ果てた中国。官軍の将軍パン(ジェット・リー)は、太平天国軍との戦いに大敗し、ただ一人生き残る。絶望し、生きる意欲を失った彼だが、行きずりの女(シュー・ジンレイ)に救われる。
 やがて彼は盗賊団の山塞に身を寄せる。行きずりの女は、盗賊団の首領アルフ(アンディ・ラウ)の恋人(妻?)リィエンであった。
 勇猛な盗賊といえども、軍の横暴の前では無力である。悪名高い魁軍に辱められた彼らは、官軍に身を投じ、義勇兵として太平天国と戦う決意をする。パン、首領のアルフ、その弟分のウーヤン(金城武)の三人は義兄弟の契りを結ぶ。題名の投名状とは、この義兄弟の契りのこと。それぞれ人を殺して誓いを立てる。「共に生きるより、共に死なんとす」と。
 パン将軍は優れた軍略家にして卓越した武人であり、太平天国軍に対して見事な勝利を重ねる。だが、大臣たちに煙たがられ、彼らの軍は孤立を深める。
 何千何万の餓えた兵を前にパンも無力である。敵も味方も、兵も農も戦乱に苦しむ。虐げられた者を救おうとするパンの理想は、酷薄な政治と戦争の悲惨の前に引き裂かれていく。そして三人の義兄弟、そしてリィエンの運命は悲劇的な破局へと向かっていく……。

 戦闘シーンは満載だが、目指されているのは華麗なアクションではなく、苦痛や死を見据えたリアルな戦闘だ。誇張もあるけれど、ワイヤーアクションで人が飛びまわったりはしないので、その手のものが苦手な方もぜひご覧いただきたい。たとえば『レッド・クリフ』と比べてもずっと迫力がある(もっとも『レッド・クリフ』はパート1にがっかりしたので、より評判のいいパート2は見てない)。
 大規模な合戦もあれば、ジェット・リー(リー・リンチェイとよびたいが)の立ち回りもある。武侠映画としてはこの位のバランスがちょうどいいのではないかと思う。

 清末におきた実際の暗殺事件が元になってるそうだが、時代考証はどの程度正確なんだろう。太平天国の軍ってあんなお揃いの軍服だったのかなあ、とか、第一次大戦のような塹壕がすでにあったのかなあ、とか疑問は持ったけど、こちらに知識がないので何ともいえない。あれ、そもそも辮髪にしてたっけ……してないはずないか、髪があるように見えるのは無精髪だろう。
 ちょっと残念だったのは、特異な革命集団としての太平天国があまり描かれていなかったこと。

 役者陣も皆いい。特に、ジェット・リーがこんなに演技できるとは知らなかった。苦悩する理想家を陰影深く演じている。
 徐静蕾は美人女優のはずだが、ノーメイク風メイクで、薄汚れてて、あまり美人には見えない。すばらしい。時代劇はこうでないと。ツルツルしたきれいな顔ばかり並べたコスプレ大会のような映像ではこの感動はなかった。現代劇だってそうあるべきだと思うなあ。

※追記:コメントで、中国版の主題歌はアンディ・ラウが歌ってると教えていただいた。youtubeにあった。多分これでしょう。

リンク

オフィシャルサイト
ウォーロード/男たちの誓い@映画生活
武ニュースDiary 金城武のファンサイト。当然、金城武が中心だが、監督や他の出演者の情報、インタビューなどもいろいろ訳してくれている。『投名状』の話題は2007年から2008年に多い。

posted by 読書家 at 23:24| Comment(7) | TrackBack(5) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
私もアルフィーのエンディングに心からがっかりしたので、コメントさせていただきます。
(アルフィー自体はいいと思うのですが、重厚な本編ときらびやかで軽みのあるアルフィーの音楽はミスマッチすぎました)
中国版はアンディ・ラウの歌で、もっと本編に合っていたと思います。
どうしても日本の歌手で、というなら、まだ北島三郎の「兄弟船」の方が合うと思います。
Posted by なな at 2009年05月15日 00:32
アルフィーのファンから抗議が来たらどうしようと恐れてたので、同意していただいて嬉しいです。
中国版はアンディ・ラウでしたか。ありがとうございます、探して聴いてみます。
多分、アンディが演じたアルフに掛けてアルフィーを選んだんでしょうね。駄洒落で選ぶな! と言いたいです。
「兄弟船」とはすごいセンスですね。確かに演歌への先入観さえ捨てれば、合うような気がしないでもありません。
Posted by 本、映画、音楽 at 2009年05月16日 01:52
こんにちは。映画生活のサイトから来ました。
中国版(というか私が見たのは香港版ですが)では、映画のエンドロールに流れるのは、劇中に何度か流れた「投名状のテーマ」というべきサウンドトラックの一曲です。
特に静かなアレンジで、しみじみとかかっていました。それが映画の余韻というものですよね。
アンディの主題歌は、作品のイメージソングというようなもので、作品自体には流れていません。
ピーター・チャン監督が「時代劇の最後に現代音楽が流れるのは大嫌い」だそうなので。

アルフィーは嫌いではありませんが、このようなことをしていても、映画の興行にプラスになるとは思えませんよね。
映画より、CDを売りたいための戦略なのでは?と勘ぐってしまいます。
大人の事情もあるのでしょうが、宣伝や邦題のつけ方も含めて、配給会社にはもっと映画作品に対する愛情を見せて欲しいものですね。
Posted by 葉月 at 2009年05月21日 21:22
葉月さん、いろいろご教示ありがとうございます。
>ピーター・チャン監督が「時代劇の最後に現代音楽が流れるのは大嫌い」だそうなので。

そうですか。では監督の意向を無視した選曲なのかもしれませんね。何か違うものを見せられてしまったような気がします。
オリジナル版の映画では、若い兵士による強姦シーンがあるとも聞きました。娯楽時代劇でそこまで踏み込んで戦争を描くことはまずないと思いますが、監督の本気さが感じられます。DVDでは是非こちらを見たいです。
配給会社には、この力作をもっともふさわしい形で日本の観客に届けよう、という本来あるべき姿勢を取り戻してほしいです。
Posted by 本、映画、音楽 at 2009年05月23日 00:57
はじめまして。突然の紹介で失礼します。


ジェット・リーがアクションを封印して自閉症の息子との情愛を演じる映画「海洋天堂」(原題)が今年中国・香港・台湾などで公開されたのをご存じでしょうか。

ジェット・リーは脚本に感動し、ほぼノーギャラでこの映画への出演を決めたそうです。

この映画の音楽担当は、久石譲さんです。医学監修には日本人も関わっているそうです。


しかし、この映画は娯楽作ではないので興行的に不安があるのか、日本での公開はまだ決まっていません。

そこで、この映画の日本公開を目指して『ジェット・リーの「海洋天堂」を日本で観たい!』という活動を以下URLのサイトで行っていて、ネットで賛同メッセージを募っているそうです。
http://oceanheaven.amaterasuan.com/
もしよろしければ、ご協力お願いいたします。

(注…私はこの日本公開活動の運営者ではありません)


映画「海洋天堂」のストーリーです

水族館に勤める王心誠(ジェット・リー)は、妻を亡くして以来、自閉症の息子の大福を男手ひとつで育ててきました。
大福は海で泳いだり、水中の生物と触れ合うのが好きでした。
大福が22歳になり、心誠は将来の息子の自立について考えていました。
そんな中、心誠が末期がんに侵されていることがわかり…


予告編動画(英語字幕付き)
http://www.youtube.com/watch?v=F6MGxP2_oi8
Posted by まっぴ at 2010年11月14日 08:37
まだまだ呟いて火傷しちゃった有名人が後を絶たない。次誰が炎上するかリスト作ってみたんで一緒に共感してくれ
Posted by ツイッター at 2012年01月20日 20:18
とうとうカラコンが発売されるみたいだよ!まだまだ購入できるサイトが少ないから見逃さないで!
Posted by デ コ ログ at 2012年01月23日 20:12
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