2004年11月27日

「ゴーメンガースト」シリーズ マーヴィン・ピーク著 浅羽莢子訳

タイタス・グローン(創元推理文庫 534‐1)
マーヴィン・ピーク著・浅羽 莢子訳
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ゴーメンガースト(創元推理文庫 534‐2)
マーヴィン・ピーク著・浅羽 莢子訳
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タイタス・アローン(創元推理文庫 534‐3)
マーヴィン・ピーク著・浅羽莢子訳
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感銘点:100点(100点が最高) 読んだ年齢:10代後半

 「指輪物語」、『邪龍ウロボロス』などと並ぶ幻想文学の金字塔。僕にとっては他に並ぶもののない唯一無二の最高傑作。指輪物語が無数の亜流を産み、一つのジャンルを築くほど一般的になったのに比べ、ピークのあまりに独創的な世界は未だに孤峰としてそびえ立っている。魔法のたぐいは出てこないし、ファンタジーと呼ぶのが正しいのかわからないが、ここまで異質な世界を描いた小説は他にないだろう。現実世界の影が薄くなるほど別世界に心をとらえられた経験は子供時代をのぞけばこの時だけだ。
 どことも知れない場所に建つゴーメンガースト城を舞台に、城主の息子タイタス・グローンの成長が描かれる。といっても通常の成長小説とはまったく違う。異形の城と、そこに巣くう奇怪な住人たちによる奇怪な話が息苦しさを感じるほど精緻に描写される。暗くゆがんだこの城こそがすべての中心である。一見奇矯な登場人物も、この城に深く根ざしているために浮いて見えることはなく、驚くほど存在感がある。城の暗がりから生え出してきたかのような住人たちにありきたりな者は一人もいない。がらくたで埋まった屋根裏で孤独な夢を見るタイタスの姉フューシャ、木の根に覆い尽くされた部屋で二人きりの世界を生きる双子の伯母たち、陰謀を廻らし成り上がろうとするスティアパイクなど、いつまでも忘れられない強烈な印象を与える。
 彼らがあまりに風変わりなために、コメディとして楽しむ読み方もあるようだ。確かに笑える面もあるが、基本的には孤独な人たちの陰鬱な話だ。誰もが城の呪縛を逃れられず古い因習が支配する世界に生きている。だからこそ時折描かれる友情が感動的なんだと思う。暗い魂がふれあって強い輝きを放つ。
 読み始めた当初は、恐ろしく濃密で異質な世界に魅了されながらも、時が止まったかのように蜿蜒と続く城の描写や儀式の説明ににとまどった。このまま最後まで続くのかとちょっと不安になった。1巻目が終わっても主人公であるはずのタイタスは赤ん坊のままなのだ。しかし2巻目の『ゴーメンガースト』からは物語も大きく動きだし、寝食を忘れて読みふけるほど夢中になった。読み終えるのが惜しくてならず、この魅惑的な世界にいつまでもとどまっていたかった。
 著者のピークは長い闘病生活の末、四巻目の構想をノートに残し、1968年に57才の若さで世を去った。残念でならない。とっくの昔に死んだ作家を惜しんで泣いたのは、他にはドストエフスキー、エミリ・ブロンテくらいだ。
 浅羽莢子さんによる翻訳もすばらしい。文章の力がとても重要な作品だけに、イメエジ喚起力の強い見事な日本語に訳してくれたことを感謝したい。

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posted by 読書家 at 15:42| Comment(0) | TrackBack(1) | SF,ファンタジーなど | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Excerpt: タイタス2000年11月25日 | 上映時間 = 162分| 製作国 = アメリカ| 言語 = 英語| 制作費 = | 興行収入 = | 前作 = | 次作 = |..
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