2013年09月29日

『リビジョン』 法条 遥 著




法条遙の『リライト』はタイムリープものの傑作で、サスペンスフルな展開と衝撃の結末に本当に驚かされた。
その『リライト』にまさかの続編『リビジョン』が出た。4部作の予定だとか。

リライトの感想

未来予知の能力をもつ千秋霞。生後2週間の息子ヤスヒコが原因不明の病気にかかり、命が危なくなる。
予知能力を駆使して息子を何とか救おうとする千秋。だが、時間の糸はもつれにもつれ・・・というお話。

今回はちょっとどうかなあ。この理屈はいくらなんでも通らないんじゃないか。
ルール設定にどうも納得できなくて、物語に入り込めなかった。
実は伏線かもしれないので最終巻まで読まないと判断は下せないけど、今の段階では、やや失敗作かな、と感じた。

はたして今後修復できるのか。才能ある人だと思うので期待したい。
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2013年09月23日

『半分のぼった黄色い太陽』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著




『半分のぼった黄色い太陽』
 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ 著
 くぼた のぞみ 訳
 河出書房新社

内容
犠牲者数百万といわれるナイジェリアのビアフラ戦争。この内戦の悲劇をスリリングなラブストーリーを軸に、心ゆさぶられる人間ドラマとして描く。最年少オレンジ賞受賞。映画化。
(河出書房新社ウェヴサイトより)


ナイジェリアで1960年代後半に起こったビアフラ戦争を背景に、人々の苦難や愛憎が描かれる。

著者はナイジェリアの若い女性作家で、本作は29歳の時に出版され、最年少でオレンジ賞を受賞した。


視点人物は3人。

農村で生まれ育った少年ウグウは、大学教授オデニボの家にハウスボーイとしてやとわれ、知的な生活に魅了される。

ラゴスの裕福な家庭の娘オランナはロンドン大学を修了して帰国したばかり。オデニボの恋人として一緒に住み始める。

イギリス人のリチャードは、イボ族の美術品に惹かれてナイジェリアに住み着き、オランナの双子の妹カイネネと恋に落ちる。(リチャードのヒントとなったのはフレデリック・フォーサイスだとか。)

この三人を軸に、ナイジェリアの諸相が描かれていく。

人間模様もおもしろいし、戦争やナイジェリアの状況についての記述もいろいろと興味深かった。
アフリカ人自身の視点でアフリカについて描かれたものは読む機会が少ないと思うので(私が知らないだけかもしれないが)とても興味深かった。


アディーチェは1977年生まれの若い作家で、戦後の生まれだけど、祖父を二人とも戦争で亡くしたそうだ。
ビアフラのことはナイジェリアではかなりタブー視されているそうだが、家族などに当時の話を聞いて、時代を再現している。
本書の出版によって、ビアフラについて語る気運が生じてきたそうだ。

知識人階級が中心に描かれるので、戦争や飢餓の悲惨さはあまり前面に出てこない。
戦争の全体を描くというより、家族小説、恋愛小説としての面が強いと思う。


http://www.ted.com/talks/chimamanda_adichie_the_danger_of_a_single_story.html
TEDでのアディーチェの講演。“シングルストーリーの危険性”
日本語字幕も選択できる。NHKで見る必要ないんだな。
シングルストーリーがアフリカについての固定観念を生み出す危険性を語っている。
実は私自身、この小説を読み始めたとき、自分が勝手に持っていたイメージと違って戸惑ったのであった。
私もステレオタイプにとらわれていたのか。


新聞などでアフリカについての記事を読むと、たいてい「日本の報道は飢餓や紛争に偏りすぎ」とか、逆に「飢餓や紛争から目をそらしてはいけない」とか、記者の不満が前置きされている。それだけ日本では情報が少ないということだろう。
小説を読むことで、生きた人間をとおしてアフリカの多様性を知ることができると思う。



小説中に出てくるレックス・ローソンの「ビアフラ、万歳、自由の国」ってこれかな。
レックス・ローソンはハイライフ(西アフリカを中心に人気のポピュラー音楽ジャンル)のスターだ。
≪本書から引用≫
「レックス・ローソンは本物のナイジェリア人です。カラバリという民族性に執着せず、ナイジェリアのすべての主要言語で歌っている。そこが独創的だわ−−彼を好きになる十分な理由だわ」とミス・アデバヨがいった。
「そこが彼を好きになれない十分な理由だな」とオデニボ。「われわれは自分の文化に無頓着であるよう志向すべきだなんて、そんなナショナリズムは馬鹿げている」
(131ページ)
このような議論が読めるのもこの小説の魅力だ。文化、歴史、政治について、オデニボの居間に集ったインテリたちが語る。


ナイジェリアやビアフラ戦争については、訳者あとがきに説明があるので、この小説を読むためにはそれで十分かと思う。
私は一応ネットで予習して、下記の本を手元に置いておいた。
ビアフラ戦争―叢林に消えた共和国 (ヒストリア) 室井義雄 著
拾い読みしただけだけど、一般向けにわかりやすく解説されていると思う。
地図や写真も載っているので小説を読む際の参考になる。

読んでないけどフレデリック・フォーサイスもビアフラについて書いている。
『ビアフラ物語―飢えと血と死の淵から』 (角川選書 123)



なおナイジェリアの小説については、以前にチヌア・アチェベの『崩れゆく絆―アフリカの悲劇的叙事詩』の感想を書いた。 http://dokushoburogu.seesaa.net/article/223083329.html
アディーチェにとってチヌア・アチェベは大事な作家のようだ。エピグラフにも彼の本の一節が掲げられている
インタビュー(BBCのトーキングブックス)によると、アディーチェは子供の頃、イギリスの児童文学のような小説を書いていたが、チヌア・アチェベなどを読み、イングランドの子供たちではなく、自分たちの物語を書いても良いのだと承認されたような気がしたそうだ。

エスペランサの部屋
翻訳者くぼたのぞみさんのサイト
『半分のぼった黄色い太陽』の映画化情報などもある。先日のトロント映画祭でプレミア公開されたそうだ。



半分のぼった黄色い太陽/関連地図
https://docs.google.com/file/d/0B6KGS3ACknt6YjY1N2E4OTctN2IwNy00NDY4LWExNzUtOTU4ZDVkOWQwMGE3/edit?hl=en&pli=1
posted by 読書家 at 18:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 純文学など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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