2012年10月21日

『ハビビ』 クレイグ・トンプソン 著



『Habibi』T、U(二巻で完結)
クレイグ・トンプソン 著, 風間賢二 翻訳 2012年 TOブックス 刊


本国アメリカで大変高い評価を受けているグラフィック・ノベル。
著者のクレイグ・トンプソンはこの『ハビビ』で2012年アイズナー賞のベスト・ライター/アーティスト賞を受賞した。

これは滅多に出会えないようなすごいマンガだと思う。
上下巻あわせて700ページあまり、濃密な世界に圧倒された。
危機に瀕した黙示録的な世界を舞台に、荒々しくも詩的で美しい物語が展開する。

アラブ世界のどこか。
貧しい少女ドドラは幼妻として書記の男に嫁がされる。
男に読み書きを習い、多くの物語を覚えるが、盗賊にさらわれ、奴隷となってしまう。
彼女は幼い黒人の男の子チャム(後にザム)を救けて、共に沙漠に逃れる。
砂漠に置き去りにされた廃船で、二人きりの生活が始まった。
だが彼らを過酷な運命が襲う・・・。

というのが主筋。
この主筋も力強く感動的だけど、千夜一夜物語のように、ドドラが語る数多の物語が挿入され、絡み合いながら進行する。
これがまた面白い。
ソロモン王とシバの女王、アブラハムの生け贄、ノアの方舟など。
旧約聖書、コーランのほか、たぶんアラブの民間伝承だと思う。
主にコーランから取られているらしいけど、私が知っているお話とは微妙に異なっていて、コーランを読んだことのない私には新鮮だった。

絵も素晴らしい。
みっちり描き込まれたイスラム文様やアラビア文字のカリグラフィーに目眩がおこりそうだった。
数秘術に魔方陣、アラビア文字の象徴性が、暗喩に満ちた絵で表現される。
まさに魔術的。


TOブックスの紹介ページ
http://www.tobooks.jp/books/book_072.html
立ち読みもできる。絵柄は一見古くさく感じられるかもしれないけど。

詳しい紹介が「漫棚通信ブログ版」に
http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-b662.html


BGMにアラブ歌謡などを流してたのだけど、意識して聴くと「ハビビ」という言葉はよく歌詞に出てくるようだ。
一般的な言葉なのだな。
例えば・・・
Staiffi / Turkish Tango - YouTube
Staiffi Et Ses Mustafa's(スタイフ・エ・セ・ムスタファス)の"Turkish Tango(ターキシュ・タンゴ)"
題名は"Turkish"だけど、トルコじゃなくてアラブだろ、とのコメント多数。
この歌手は日本では「悲しき60歳」 (ヤ・ムスタファ)で知られてる人のようです。
ついでにリンク
MUSTAFA - STAIFFI - YouTube

Fairouz - Rajeen Ya Hawa - YouTube
ご存知レバノンの歌姫、フェイルーズ(またはファイルーズ)による「愛よ、われらは戻った」


「アラブ歌謡の女王たち〜ウム・クルスーム、ファイルーズ、アスマハーンを歌う」
このCDはチュニジア出身のドルサフ・ハムダーニが、アラブ歌謡の女王たち、ウム・クルスーム、アスマハーン、そしてファイルーズの歌を歌ったもの。

posted by 読書家 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画、画集など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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